古川春秋
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1977年熊本県生。2012年「ホテルブラジル」にて第3回野性時代フロンティア文学賞を受賞し作家デビュー。

  


     

「ジッシュー!! ★☆


ジッシュー!!

2016年06月
光文社刊

(1700円+税)

 


2016/07/19

 


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東京から京都の大学へ進学。そこで出会った阿久津香澄が好きになり、彼女と同じ教育課程を選び、母校の小学校で教育実習をすることになったというのが、本書の主人公である加賀谷貴志の身上。
ところが、香澄に告白しようと決意した矢先、その香澄から中学の同級生と再会して付き合うことになったと打ち明けられ、敢え無く撃沈。教職に就く決意も付かぬまま、今更キャンセルもできないと教育実習が始まります。

内気で不器用、そして時々正義感を無暗に爆発させる主人公、必然的に教育実習の場は迷走、ドタバタ、挫折の繰り返しなのですが、それでもちゃんと人間として、教師候補生としていささかの成長を遂げるストーリィになっています。

そんな主人公の指導教師となるのが鞍馬優作。一介の教師のくせに外車ベントレーを乗り回し、とりかえひっかえ美女とお付き合いという型破りな人物。それでも教え子たちの鞍馬への信頼は高く、おまけに学習指導の実績も文句なしという人物。主人公を超える漫画的ヒーローといった印象の教師像です。

親の不仲に悩まされる馬場悟、誘拐事件の的となった奥田道彦、不登校中の二階堂美登里、ラブホテルを選択中のところ補導された小学生カップルという教え子に関わる問題に、同僚美人教師の千歳暁を悩ますストーカー、鞍馬のかつての教え子に関わる事件と、主人公を悩ますトラブルは目白押し。

鞍馬独特のトラブル解決ノウハウの面白さに、時に目を覆いたくなるドタバタ劇、そして多少なりとも主人公の成長を感じ取ることのできるストーリィ。それなりに楽しめます。

プロローグ/牡蠣と酒/四つの指令/チャンポンと六人の美女/モーリシャス・ドードーは如何にして滅びたのか/薔薇と憂鬱/ブラジルの蝶

 


  

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