新井素子作品のページ


1960年東京生、立教大学文学部独文科卒。都立井草高校2年在学中、「あたしの中の・・・」にて第1回奇想天外新人賞に佳作入選し、作家デビュー。1981年「グリーン・レクイエム」、82年「ネプチューン」にて2年連続星雲賞短編部門賞受賞。99
年「チグリスとユーフラテス」にて第20回日本SF大賞を受賞。


1.チグリスとユーフラテス

2.この橋をわたって

 


            

1.
「チグリスとユーフラテス      日本SF大賞


チグリスとユーフラテス

1999年02月
集英社

(1800円+税)

2002年05月
集英社文庫
(上下)



1999/05/05

新井素子さんの作品を読むのは本書が初めてです。私にしては珍しいものに手を出したな、 と感じるのですが、表紙デザインの美しさに惹かれたというのが理由です。
 
ストーリィの舞台は遠い未来に地球から移民した惑星ナイン。最盛期 120万人を擁したナイン社会も、住民の生殖能力が低下し、ついに「最後の子供」ルナに至る。ただ一人残ったルナは、コールド・スリープについていた4人の女性を順番に起こし始める。
「ルナと4人の女たちで語られる、惑星ナインの逆さ年代記」というあらすじです。

SFと、少女小説と、人生ドラマが交じり合ったような、そんな印象を受ける小説。
ルナは何を考え、何のために4人を眠りから呼び起こしたのか。ミステリアスな雰囲気も漂います。マリア・D、ダイアナ・B・ナイン、関口朋美(トモミ・S・ナイン)、レイディ・アカリと時代を遡っていくストーリィ展開は、興味をそそられるものがあります。
その中では、本書の半分を占めるレイディ・アカリの部分が圧倒的に面白いです。その前の3人はレイディ・アカリの前座に過ぎない、と言って良いでしょう。

物語の本筋は何かと言えば、人生論のようです。人生とは何か、人は何の為に生きるのか。SFと言いつつ、このストーリィは地球人類の近未来の姿でもあります。
その意味で、この作品に新井さんがかなり力を入れたことが感じられます。「新井素子の今世紀最高傑作!」という帯文句の適否は別として。

            

2.
「この橋をわたって ★★


この橋を渡って

2019年04月
新潮社

(1500円+税)

2022年01月
新潮文庫



2019/05/25



amazon.co.jp

作家生活40周年の作品集とのこと。
かつて話題となった
「チグリスとユーフラテス」が、私として新井素子の初読。しかし、あまり好みに合わず、それっきりとなっていたのですが、40周年の集大成というべき作品ということだったので、読んでみようと思った次第。

SF小説なのか、ファンタジー小説なのか、どちらとも言い切れないなぁという印象。
敢えて言えば、優しさ、可愛らしさに満ちたSForファンタジー作品、そう言うのがぴったりのように感じます。

「橋を、架ける」:単純極まりない話なのですが、何世代にも亘り、どこか未来へ繋がっていく、という雰囲気ある作品。感触がいいですね。
「黒猫ナイトの冒険」:カラスと仔猫の攻防? でもその裏にある真実。優しさが良いなぁ。
「妾は、猫で御座います」:一言、笑えます。

ショートショートの中では、
「お片づけロボット」がことに愉快で、好きです。

「碁盤事件」:なるほどなぁ。主婦の事故の裏にはそうした事情があったのか。いや、これ、童話的ですよね?
「なごみちゃんの大晦日」:亡くなったおばあちゃんと、地元の神様、そして何やら妖しい世界? こうした世界観が新井素子作品の魅力なのだろうなぁ、と思うところ。

橋を、架ける/黒猫ナイトの冒険/妾は、猫で御座います/
<ショートショート>倍倍ケーキ/秘密基地/お片づけロボット/
碁盤事件/なごみちゃんの大晦日

    


  

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