青山美智子作品のページ


1970年生、愛知県出身。大学卒業後渡豪してシドニーの日系新聞社で記者として2年間勤務。帰国後上京、出版社で雑誌編集者等を経て執筆活動入り。2003年「ママにハンド・クラップ」にて第28回パレットノベル大賞佳作を受賞。17年デビュー作「木曜日にはココアを」にて第1回宮崎本大賞、同作と「猫のお告げは樹の下で」にて第1回未来屋小説大賞を受賞。


1.お探し物は図書室まで

2.月曜日の抹茶カフェ

3.赤と青とエスキース

 


                   

1.
「お探し物は図書室まで What you are looking for in the library ★★


お探し物は図書室まで

2020年11月
ポプラ社

(1600円+税)



2020/12/03



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今の自分の状況に行き詰まりを感じている主人公たち、ふと訪れたコミュニティセンターに設けられている図書室に足を踏み入れると、「何をお探し?」とレファレンス担当の女性司書が温かい声で問い掛けてくれます。
読みたい本の要望を伝えると、そのニーズに合う本と、それとは別の本、さらに何故か羊毛フェルトの付録つき。
何となく狐につつままれた風ですが、そこから各主人公に新しい視点が生まれ、そして新しい一歩を踏み出す勇気を得られることになる、という連作ストーリィ。

羽鳥コミュニティハウスの図書室で来館者を迎えてくれるのは、森永のぞみという司書を目指す19歳の職員と、名前に反して大きな女の人という印象の司書=小町さゆり・47歳

主人公たちを迎え入れる森永のぞみと小町さゆりという2人の取り合わせがいいですねぇ。
まるで魔法の家に誘い入れるような見習い魔女と頼りがいのあるベテラン魔女、という雰囲気があって。
さらに後になって、この2人に以前からの繋がりがあったと知れるところがまた楽しき哉。

青山美智子作品は本書が初読みなのですが、本書では居心地のよい温かさに浸れ、前向きな気持ちになれる処が嬉しい。

「朋香−21歳」:総合スーパーの婦人服売り場店員。仕事も実生活も夢の東京暮らしとは大違い。打開の鍵は?
「諒 −35歳」:子供の頃からの夢はアンティーク店経営。その夢は実現可能なのだろうか。
「夏美−40歳」:37歳で出産。産休を早く切り上げたのに雑誌編集部から資料部へ異動。しかも子育ては思うようにいかず、ストレスが溜まる一方。大丈夫か?
「浩弥−30歳」:イラストレーター志望だったが、就活で挫折してから挫折続きで今はニート。どうしたら道は開けるのか?
「正雄−65歳」:会社を定年退職したその翌日、ハッと気付くと一体何をしたら良いのやら。
とくに最後の篇、他人事ではないだけに思わず真剣になります。


1.朋香−21歳・婦人服販売員/2.諒−35歳・家具メーカー経理部/3.夏美−40歳・元雑誌編集者/4.浩弥−30歳・ニート/5.正雄−65歳・定年退職

                

2.
「月曜日の抹茶カフェ Matcha Cafe on Monday ★☆


月曜日の抹茶カフェ

2021年09月
宝島社

(1364円+税)



2021/10/08



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私は未読ですが、「木曜日にはココア」の続編、との由。

川添いの桜並木のそばに佇む喫茶店<
マーブル・カフェ>。
その定休日である月曜日には、オーナーがイベントを行ったりすることがあるらしい。
1月のツイていない月曜日、間違えてやってきてしまった携帯電話ショップの女性店員が目にしたのは、<
抹茶カフェ>。
彼女がそこに足を踏み入れた時から、人と人を繋いでいく月毎の連作ストーリィが、1年にわたって繰り広げられていきます。

ちょっとしたおやつ時、軽くて味わい良く、色とりどりに並べられたプティフールを賞味する、といった印象の連作ストーリィです。

登場人物としては、冒頭篇に登場する携帯電話ショップで働く若い女性主人公、愛嬌があって好きだなぁ。
ストーリィとしては、
「月曜日の抹茶カフェ」「春先のツバメ」「拍子木を鳴らして」「抜け巻探し」あたりが好きですね。

応援したい人物は、
「デルタの松の樹下で」の主人公である大学生の孝晴。
そうなんだよ、女の子と付き合うことが全てではない、自分の好きなことをやる方が大事だと思うよ。


1.月曜日の抹茶カフェ(睦月・東京)/2.手紙を書くよ(如月・東京)/3.春先のツバメ(弥生・東京)/4.天窓から降る雨(卯月・東京)/5.拍子木を鳴らして(皐月・京都)/6.夏越の祓(水無月・京都)/7.おじさんと短冊(文月・京都)/8.抜け巻探し(葉月・京都)/9.デルタの松の樹の下で(長月・京都)/10.カンガルーが待ってる(神無月・京都)/11.まぼろしのカマキリ(霜月・東京)/12.吉日(師走・東京)

                 

3.
「赤と青とエスキース Red and Blue and esquisse ★☆


赤と青とエスキース

2021年11月
PHP研究所

(1500円+税)



2022/04/22



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一枚の絵(エスキース)が繋いでいく、長い男女の長い物語。

一旦読むのを見送っていたのですが、本屋大賞の候補となった作品であることから、一応一応読んでおこうと思った次第です。

各章で主人公は異なりますので、その点は連作風。
そしてその背後で、長い年月にまたがる物語が息づいている、という構成です。
各章で共通するのは、何らかの赤と青の対比があり、そして一枚の絵(エスキース)が何らかの形で登場すること。

各章のストーリィ、それなりに楽しめますが、ただ長い物語にする果たして必要があったのか、と思わざるを得ません。
サプライズを織り込むためにそうしたという印象が拭えず、必然性を感じ取れなかった処が惜しまれます。
 
「金魚とカワセミ」:メルボルンに交換留学したレイ、現地に住む日本人のブーと期間限定の恋人になります。
そして間もなく留学期間が終わるという時期、ブーに頼まれ水彩画家志望だという友人=
ジャック・ジャクソンの絵のモデルになることを引き受けます。それが本書の<エスキース>。
「東京タワーとアーツ・センター」:額職人である空知・30歳は、工房の主である村崎が額装の依頼を受けた絵の中に、かつてメルボルンで出会い意気投合したジャック・ジャクソンの絵を見つけ・・・。
「トマトジュースとバタフライピー」:漫画家のタカシマ剣・48歳は、ウルトラ・マンガ大賞を受賞したかつての弟子=砂川凌から、<カドル>という喫茶店での対談を依頼されます。同じマンガ家でもタカシマと凌の性格は全く対照的で・・・。
「赤鬼と青鬼」:50歳で転職、小さな輸入雑貨店で働き始めて一年半になる、別れて1年になる元恋人=と再び接触する必要が生じたと思ったらパニック障害を発症し・・・。
「エピローグ」:画家ジャック・ジャクソンが、若き日に知り合った友人とのこれまでを振り返り、総括する篇。

プロローグ/1.金魚とカワセミ/2.東京タワーとアーツ・センター/3.トマトジュースとバタフライピー/4.赤鬼と青鬼/エピローグ

      


   

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