青崎有吾
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1991年神奈川県横浜市生、明治大学文学部卒。在学中は明治大学ミステリ研究会に所属。2012年「体育館の殺人」にて第22回鮎川哲也賞を受賞し作家デビュー。

  


       

「早朝始発の殺風景 ★★


早朝始発の殺風景

2019年01月
集英社

(1450円+税)

2022年01月
集英社文庫



2019/02/08



amazon.co.jp

如何にも高校青春ストーリィと言える連作ミステリ。
各篇の共通項は、密室劇であること。

「早朝始発の殺風景」の“密室”は、早朝の始発電車。
主人公の
加藤木が始発電車に乗り込むと、その車両にたった一人乗客が。しかもそれは、口を利いたこともない同級生女子。
何のために彼女はこんな始発電車に乗っているのか。それは彼女にしても同様。何故、加藤木は始発電車に?
その女生徒の苗字が「殺風景」だというのですからびっくり。

「メロンソーダ・ファクトリー」では、ファミレス。
仲の良い3人組女子。学園祭で着るクラスTシャツのデザインにつき、親友は自分を傷つけるような選択を。一体何故?
「夢の国には観覧車がない」では、観覧車。
フォークソング部の引退記念遊園地行き。それなのに何故、下級生男子と2人だけで観覧車に乗ることになったのか?
「捨て猫と兄妹喧嘩」は公園。妹が拾った猫、両親が離婚して父親と元の家に暮らす1歳上の兄に引き受けてほしいと頼むのですが・・・。
「三月四日、午後二時半の密室」は、同級生の部屋。
卒業式を風邪で休んだ
煤木戸の家を、元クラス委員長の草間は卒業アルバムを届けるため訪れるのですが・・・。

「エピローグ」は5篇の登場人物たちが揃って登場します。

本ストーリィの魅力は、密室状況における語らいの中で、それまで知らなかった同級生のこと、友人でありながら全く気付かなかったことを知っていく、という展開にあります。
それこそ、高校時代の楽しさだったのではないでしょうか。

中でも一番青春らしい輝きを放っているのが、「早朝始発の殺風景」。エピローグも加藤木・殺風景の1年後の様子を中心に描いていて、嬉しくなります。

私好みの、青春連作ミステリ。

早朝始発の殺風景/メロンソーダ・ファクトリー/夢の国には観覧車がない/捨て猫と兄妹喧嘩/三月四日、午後二時半の密室/エピローグ

   


  

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