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1.もゆる椿 2.誓いの簪 |
「もゆる椿」 ★★ | |
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旗本の次男で部屋住みの真木誠二郎、剣で身を立てたいと思っても一刀流道場で目録程度。 そんな誠二郎が突然、裏目付だという佐野兵衛からスカウトされます。役目を得て喜んだものの、初めての任務は京へ向かう刺客に同行すること、と命じられます。 しかし、鬼のようなと言われたその刺客は、美津というまだあどけない少女。 その美津、隠れ里で刺客の訓練を受け、剣の太刀筋が止まって見えるという“鬼の目”の持ち主だという。 殺す相手は、攘夷浪士たちの黒幕にいる公家、しかも美津にとって家族を殺した仇なのだという。 少女とはいえ実践経験豊富な美津に対し、道場剣術だけで真剣勝負をしたことがないという頼りない誠二郎。いったい誠二郎が同行する意味はどこにあるのか? 美津のキャラクターが面白い。食べること大好きで大喰い、誠二郎を「せいちゃん」と呼び、やたら馴れ馴れしい。 そして江戸から京へ向かう道中の間、幾らなんでもこれでは心配と美津、真剣での斬りあいができるよう誠二郎を鍛え上げることになります。 そんな誠二郎と美津、二人のコンビぶりが楽しい。 一方、誠二郎の良さといえば、男女、年齢、身分等で人を見下したりしないこと、また素直であり、正しいことをしたいという気持ちに揺るぎがないこと。 道中での面白さと対照的に、京に着くとそこには陰謀と悪計、自分のことしか考えない人間が跋扈。 さて、美津はどうなる? 誠二郎はどの道を選択するのか。 追い詰められた窮地から二人がどうやって脱出するのか、そこが読み処です。 無理筋な処もいろいろありますが、二人のコンビぶりが楽しくてそんな部分は気にならず。 最後まで、面白く読めました。その後が気にはなりますが。 |
「誓いの簪」 ★☆ | |
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新聞書評に取り上げられていたので、読んでみた次第。 主人公は江戸、深川佐賀町の裏長屋に一人で住むおりん、14歳。一年前、ある事情から江戸に逃げてきて、この長屋に住み着くこととなった。生活の糧は<提げ重>、つまりは甘味売りという体裁ながら実態は春をひさぐ仕事。 しかし、孤独な身とはいえない状況。というのは、長屋で隣に住むお園と祖父の善次郎が、やはり隣人である浪人者の佐伯蔵之介と共に誘ってくれ、毎日一緒に食事をとっている、まるで疑似家族のような状況があるから。 実はおりん、伊賀・土井家の抜け忍で、仇として狙われる身。今は江戸の片隅に潜むようにして暮らしているが、いずれ相手が現れるものと覚悟している。 そんなある日、おりんの目の前でお園が襲撃されます。とっさに忍者の技を駆使し、おりんはお園を守る。 しかし、自分ならいざ知らず、出戻りで今は飾り職人として修業中のお園が、何故狙われるのか? そこからは、時代ミステリ風の展開となるのですが、その過程で思わぬ事情がお園にはあり、それはおりん自身の問題とも絡んでいることが分かります。 今のおりんにとって一番大事なものは何か? それを守ろうとおりんはあえて危険な道を選び取る・・・。 おりん、お園、佐伯ら登場人物のキャラクターが興味深く、面白く読み進めたのですが、少々不自然というか、無理筋と感じてしまう印象を否めず。 それにしても、最後の結末には・・・・唖然。 まぁ、確かにそれもありとは思うのだけど・・・なぁ。他に決着のつけようはなかったのか。 |