相沢沙呼
(さこ)作品のページ Mo.2



11.invert−城塚翡翠No.2− 

12.
invertU−城塚翡翠No.3− 

【作家歴】、午前零時のサンドリヨン、ロートケブシェンこっちにおいて、マツリカ・マジョルカ、雨の降る日は学校に行かない、小説の神様、マツリカ・マトリョシカ、小説の神様−あなたを読む物語−、mediumメディウム、小説の神様−わたしたちの物語−、教室に並んだ背表紙

相沢沙呼作品のページ No.1

 


    

11.

「invert−城塚翡翠倒叙集− ★☆   


invert

2021年07月
講談社

(1750円+税)

2023年11月
講談社文庫



2021/07/24



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“霊媒探偵”=城塚翡翠を主人公としたmediumメディウムの続編。今回は倒叙推理という趣向、3篇です。

倒叙もの推理小説と言えばF・W・クロフツ、TVドラマで言えば「刑事コロンボ」「古畑任三郎」でしょうか。
犯人は最初から分かっていますので、興味は犯人対探偵のかけひきという構図になりますが、本作も変わるところはありません。

「雲上野晴れ間」の犯人は、システムエンジニア。
「泡沫の審判」の犯人は、小学校の女性教諭。
「信用ならない目撃者」の犯人は、元捜査一課の腕利き刑事。
各篇の犯人は証拠を残さず完全犯罪をし遂げたと確信していますが、探偵たる城塚翡翠、「雲上」では隣人となった初心な女性、「泡沫」では臨時スクールカウンセラーとして、本性を隠して犯人の懐に入り込みます。

最初から犯人が分かっているため、倒叙ものはかけひきの面白さはあっても、アッというドンデン返しの面白さは中々味わえないのですが、その興奮を味わわせてくれたのが最後の
「信用ならない目撃者」
何しろ腕利きも元刑事、そして現在は探偵事務所の所長という人物。物的証拠が何もなく、唯一の切り札は目撃者なのですが、それすら・・・・という強敵。果たしてどう逆転するのか。

“霊媒”PRが薄かったところが残念なところ。
まぁ、本作では「霊媒」とは語られず、精々オーラを感じ取るというPR止まりでしたが。
その辺りがちょっと物足りず、惜しまれます。


雲上の晴れ間/泡沫の審判/信用ならない目撃者

  

12.

「invertU−覗き窓の死角− ★★   


invertU

2022年09月
講談社

(1800円+税)



2022/10/13



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“城塚翡翠”シリーズ第3弾、invert−城塚翡翠倒叙集−に続く倒叙推理もの、2篇を収録。

城塚翡翠という探偵役の魅力はあっても、面白さとしては前作並みかなと思っていたのですが、最後の最後でヤラレました。
最後の急展開が鮮やか、予想していたより面白かった!

「生者の伝言」:友人の親が所有する別荘に不法侵入していた青木蒼汰・15歳、友人の母親に見つかり揉み合いに。気が付くと母親は死体となっており、自分の手には血に塗れた包丁が。
その時、嵐に遭った2人の若い女性がこの別荘を訪ってきます。
蒼汰、やむなく迎え入れるのですが、その2人というのが城塚翡翠とアシスタントの
千和崎真・・・。

ただし、「生者の伝言」、まだ“序盤”と言える篇。
本巻での目玉は、“本番”と言うべき
「覗き窓の死角」の篇。
写真家の
江川詢子、2人だけの家族だった妹がイジメを苦に自殺したことの復讐を果たそうと、藤島花音を殺害します。
そして、自分のアリバイ証人に仕立て上げたのが、互いにミステリ好きであることから親しくなった若い女性=城塚翡翠。

正体を露わにした翡翠と、詢子との間でバトルが延々と繰り返されていきます。この辺りがとてもエキサイティング。
しかし、アリバイを作り上げたトリックの謎が、流石の翡翠にも全く分からずとあって、読み手もこれには安穏としていられません。
そして最後、突破口を開けようと動き出したのは、自分もまた探偵である、と呟いた千和崎真。
それから後は、まさにミステリ小説の醍醐味というべき展開。

なお、単に謎解きだけではありません。本作では、一人の判断だけで人の罪を問う危うさが訴えられています。まさに傾聴に値します。


生者の言伝/覗き窓の死角

       

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