藍内友紀作品のページ


2012年、ササクラ名義で投稿した「緋色のスプーク」にて第5回 BOX-AiR新人賞を受賞し作家デビュー。17年愛内友紀名義で第5回ハヤカワSFコンテストに「スターダスト・レイン」を応募、同作が最終候補作となり、翌年「星を墜とすボクに降る、ましろの雨」と改題し、藍内友紀名義でハヤカワ文庫JAから刊行。


 


                    

「天使と石ころ ★☆




2024年02月
早川書房

(2200円+税)



2024/03/21



amazon.co.jp

リベリアの村で暮らす7歳のカラマは、ある日ゲリラに村を襲撃され、母親を目の前で殺され、自身もゲリラの少女兵士に拉致される。
その少女兵士
アイーシャは、これからは自分たちがあんたの家族だといい、カラマにカラシニコフ(自動小銃)を押し付けます。
その日から、カラマは否応なく少年少女兵士たちの一員に加えられ、それが当然であるかのように、今度はカラマたちが他の村を襲い、平然と住民を殺し少年少女たちを拉致していく。

しかし、子どもたちは皆、首領である<
大佐>の所有物。
やがてカラマは、その歌声に価値ありと見做され、ダイヤと引き換えに白人女性へ売り渡されます。
そして学校に通うようになりますが、カラマたちが大人の所有物であることに何ら変わりない。だからといってカラマたちがそこで受けたことは・・・・。

我が物顔で振る舞う大人と、犠牲になる子どもたちとの対比がくっきりと描き出されます。
「天使と石ころ」という題名が象徴的。
天使の歌声を持ち貴重な存在であり、取引価値としてダイヤに値するものであろうとも、物として扱われるのはダイヤと変わりない。いっそ、大人から見向きもされない石ころであった方が、どれだけ幸せか。

今現在も、ガザ地区へ非道な攻撃を続けるイスラエル等々、紛争地域における子どもたちは、大人たちの紛争の犠牲でしかありません。
子どもたちの悲運を描いた作品ですが、辛く、暗いばかり。
でも読了後、そこから何か一筋でも光明が見いだせたらと、祈るような気持ちが残ります。

       


   

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