阿部和重作品のページ


1968年生、山形県出身。94年「アメリカの夜」にて群像新人文学賞を受賞し、作家デビュー。2004年「シンセミア」にて第15回伊藤整文学賞および第58回毎日出版文化賞、05年「グランド・フィナーレ」にて 第132回芥川賞、09年「ピストルズ」にて第46回谷崎潤一郎賞を受賞。

   


   

「キャプテンサンダーボルト CAPTAIN THUNDERBOLT(共著:伊坂幸太郎) ★☆


キャプテンサンダーボルト画像

2014年11月
文芸春秋

(1800円+税)

2017年11月
文春文庫化
(上下)

2020年10月
新潮文庫



2014/12/30



amazon.co.jp

阿部知重さん、伊坂幸太郎さん、2人の合作による長編エンターテインメント作品。
阿倍さんの「ピストルズ」第3刷に伊坂さんが推薦文を描いたことが、合作をするきっかけになったとのこと。
合作と一口に言ってもいろいろなスタイルがありますが、一番多いのは分担して執筆すること。でも本書は、まずプロットを2人で決めてからは互いに文章の手を入れ合ったりして執筆を進めたため、どちらの文章とはもはや言えないものとなっているそうです。
なお、私に関して言えば阿部作品は未読のため、伊坂作品としてどうかという読み方になってしまいました、悪しからず。

さてストーリィ。
桃沢瞳という若い女性が、かつて公開停止となった人気特撮ヒーローもの映画「鳴神戦隊サンダーボルト」のことを聞きまわっているところから始まります。
その中で登場したのが、太平洋戦時中、B29爆撃機3機が蔵王に墜落したとの話。そして現在、その御釜から発生した村上病のため多くの日本国民が予防接種をしているとの話。
さらに登場するのが、性格は正反対ながら小学校の野球チームで一緒だったという
相葉時之井ノ原悠という2人。昔から相葉、目茶苦茶な行動をしてはいつも他人をトラブルに巻き込むというのが悪い習癖あり。井ノ原はそれを思い出して警戒するものの、相葉にひけをとらず現在は借金を抱えて困っている身。ついつい儲け話という相葉の口車に乗せられ、とんだ厄介事に巻き込まれてしまう、というのが本書ストーリィです。

ひょんなミスから思いも寄らぬ危険なトラブルに巻き込まれ、逃げ惑いつつも、諦めることなく何とか事態の解決を図ろうと奮戦するという展開には、
ゴールデンスランバーを思い出させるところがあります。
とはいえ、伊坂作品らしいキレ味の良さが感じられない点が少々残念。その一方、本作品には荒唐無稽さが充満している等、阿部さんと伊坂さん2人の遊び気分が潜んでいるように感じます。
※男の子って、特撮ものとかヒーローもの、“戦隊”ものって、好きなんですよねぇ。

これまでの伊坂作品に比べると物足りないと感じる人もいれば、単純に面白いという人もいる・・・と、読み手の好みによって評価は分れそうな気がします。

   


  

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