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Andy Weir  米国カリフォルニアに素粒子学者でエンジニアの息子として誕生。15歳で国の研究所に雇われ、現在までプログラマーとして働く。初の小説「火星の人」は、自身のサイトに公開、キンドル版を発売して大ヒット。2014年に紙書籍版が販売される。

 


                

「火星の人」 ★★☆
 
原題:"THE MARTIAN"    訳:小野田和子


火星の人画像

2011年発表

2014年08月
ハヤカワ文庫

(1200円+税)



2014/10/13



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有人による火探査行が実現したという時代を舞台にしたSF。

3度目のミッション、しかし突然に嵐に襲われた探査チームは、予定を繰り上げ僅か滞在6日間で探査を打ち切り、火星から離脱せよとNASAから指示されます。ところが突風により吹き飛ばされたアンテナが最若手の宇宙飛行士
マーク・ワトニーを突き刺し、身体も大きく飛ばしてしまう。生体反応が消えたことからワトニー死亡と判断したルイス船長らクルーは、ワトニーの遺体を残して上空の帰還船に乗り込み、地球に向かって出発します。
ところがその後にマークは意識を取り戻し、自ら怪我の治療をして滞在棟に潜り込みます。
 
さて無事で良かったと簡単に言うことができないのは、ワトニーの取り残された場所が、火星であるということ。地球から火星までのミッションには3年という時間が必要。約4年後には次の火星探査チームがやってくる筈なのですが、それまで酸素供給器、水再生器は壊れずにもってくれるのか。またそれらが無事だったとして食料は持つのか。
火星の地表を衛星カメラで観察していてワトニーが生存していることを発見し驚愕したNASAはどう動くのか。また、後日そうと知らされた他のクルーたちはどうその事実を受け止めるのか。
 
過去にいろいろな遭難記があったと思いますが、本書以上に過酷な遭難記は在り得ない、と言う他ない究極のサバイバル・ストーリィ。
さぞ絶望感に襲われる筈、主人公が普通人ならそう思うばかりですが、そこは流石に選ばれて訓練された宇宙飛行士。生き続けるためにあれこれ工作を始めます。
 
本書の大部分はそのワトニー本人の語りによるものですが、彼が飛びぬけたユーモアの持ち主であるところが読者にとっても救いとなっています。
ストーリィは英雄物語ではないしドラマチックでもなく、むしろリアリティを主眼に置いた作品。(ちょうど台風で帰れず那覇に留めおかれた私とは比べものにはなりませんが、)なおのことリアリティを感じました。
さて、救出計画、簡単にはいきません、失敗、修正、失敗と挫折&試練続き。
そんな繰り返しの内、いつの間にかワトニーを心から応援する気持ちで読んでいることに気がつきます。
 
究極のSFサバイバル・ストーリィの傑作。是非お薦めです!

※ 映画化 → 「オデッセイ

              


      

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