アキール・シャルマ作品のページ


Akhil Sharma  1971年インドのデリー生。8歳で家族と共に米国ニューヨークへ移住、ニュージャージーで育つ。プリンストン大学にてトニ・モリスン、ポール・オースター、ジョイス・キャロル・オーツらのもの創作を学ぶ。2000年発表のデビュー長編「An Obedient Father」にてPEN/ヘミングウェイ賞を受賞。受賞後ハーヴァード大学ロースクールで学び、投資銀行に数年間勤務。その後創作活動に専念し、第2長編である「ファミリー・ライフ」にて15年フォリオ賞、16年16年国際IMPACダブリン文学賞を受賞。現在ニューヨーク在住、ラトガーズ大学で教鞭を執る。

 


                                   

「ファミリー・ライフ ★★      フォリオ賞・国際IMPACダブリン文学賞
 
原題:"Family Life"      訳:小野正嗣




2014年発表

2018年01月
新潮社刊

(1800円+税)



2018/02/27



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インドから米国に移住したインド人一家の物語。

主人公の
アジェは、先に米国に渡った父親が送ってきた航空券に羨望の目を受けながら、母親と兄ビルシュと共に夢と期待を胸に米国に渡ります。
元々優秀だった兄は、母親の期待に応えて理系の有名高校入学試験に合格し、両親を喜ばせます。しかし、飛び込んだプールの底で頭を打って意識を失い、3分間もプールの底で沈んでいたという事故が起き、ビルシュは意識を取り戻さないままとなります。

そんなビルシュを抱え、介護を担うことになった家族の負担は当然ながら重い。介護に疲弊する両親の間に喧嘩は絶えず、父親は酒を飲むようになった挙げ句アルコール中毒。主人公と母親との間にも口論が絶えなくなります。
そんな背景を負いつつ、主人公は成長していく。

ある移民家族の物語であると同時に、移民の息子の成長物語。
苦しい中でアジェが掴んだのは、ヘミングウェイの小説を読んだことをきっかけとしての小説を書く道。

本作は、作者アキール・シャルマの自伝的な作品だそうです。兄が意識不明のままになるというのは、実際に作者の家族に起きた出来事とのこと。
本作で一番心打たれることは、上記のような厳しい状況にあっても、家族の間に亀裂が生じるようなことがあっても、家族が崩壊することにはならなかったこと。
それは、インド人家族だからでしょうか、移民一家であったからでしょうか。そんなことはともかくとして、家族の絆が切れることのなかったということが、奇跡的なドラマのように感じられます。
そして、そうした中でもアジェが自分の道を見失うことのなかったことに感銘を受けます。

その一方で、アジェの最後の一言は、余りに衝撃的・・・・。

     



新潮クレスト・ブックス

      

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