ハンス=ヨアヒム・シェートリヒ作品のページ


Hans Joachim Schadlich 1935年、旧東独南部ザクセン州・フォークトラント生。東ドイツ・ベルリン大学およびライプツィヒ大学でドイツ文学と言語学を学び、博士号を取得。反体制作品を執筆していたが出版には至らず、ギュンター・グラスの援助により、1977年西ドイツで作家デビュー。同年末に西ドイツに移住し、ポストモダン的作品等、一作毎に雰囲気の違う作品を書き続けている。クライスト賞、ハイリンリヒ・ベル賞、ハンス・ザール賞、レッシング賞、シラー記念賞等受賞多数。2014年、ベルリン文学賞および連邦功労十字勲章を授与される。

 


                

「ヴォルテール、ただいま参上!」 ★★
 原題:
"SIRE,ICH ELILE...VOLTAIRE BEL FRIEDRICH Ⅱ.EINE NOVELLE"  
訳:松永美穂




2012年発表

2015年03月
新潮社刊

(1600円+税)

 


2015/04/24

 


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18世紀、フランスの啓蒙思想家ヴォルテールプロイセン王フリードリヒ二世の間に交わされた親交、そして反目、駈け引き等々を描いたユニークな歴史小説。

本書に描かれたヴォルテールとフリードリヒ二世の間のこと、殆ど史実に基づくものだそうです。実際に2人の間には深い交流があり、また2人の文通は有名で何と生涯に 250通もの書簡が交わされたとのこと。
とはいっても片や専制君主、片や市民の思想家、最初こそ打ち解けた関係だったにしろ、片方が実力を付けて来れば関係もそれなりに変わってくるというもの。

そんな2人のやりとり、駈け引き、関係の変化といった辺りに本作品の面白さがあるのですが、歴史小説によく見受けられる堅苦しさはまるでなく、むしろ軽快にして登場人物の何とも生き生きとした様子が現代的にして、すこぶる魅力です。
ドイツ語が苦手だったというフリードリヒ二世の稚拙な手紙文、思想家にもかかわらず金儲けに抜群の冴えを見せたヴォルテール。2人の意外な素顔も楽しめますが、見逃してはならないのは知性の極めて高い女性だったヴォルテールの愛人=
シャトル侯爵夫人エミリー。彼女の人柄も、上記2人に優るとも劣らない程魅力的です。
僅か 150頁余りと手頃な一冊。お薦めです。

※ヴォルテールというとまず思い浮かぶのは、その小説
「カンディード」。高校生の頃一度読んだだけなので内容ははるか記憶の彼方ですが、何と破天荒な小説かと驚いたような気がします。

    



新潮クレスト・ブックス

      

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