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Lori Roy  米国カンザス州生、カンザス州立大学卒。長年税理士として働いた後執筆活動を開始。2012年デビュー作「ベント・ロード」にてエドガー賞処女長編賞を受賞。2作目「彼女が家に帰るまで」は2014根度エドガー賞長編賞にノミネート。現在家族とともにフロリダ州在住。

 


             

「彼女が家に帰るまで」 ★★
 原題:"UNTIL SHE COMES HOME" 
      訳:田口俊樹/不二俊子 


彼女が家に帰るまで

2013年発表

2016年04月
集英社文庫刊

(1050円+税)

 


2016/09/07

 


amazon.co.jp

1958年の米国デトロイトが舞台。
それまで白人ばかりだった住宅街に黒人が移り住んでくるようになり、白人住民たちの間に不安感が兆しだした時期に、黒人売春婦の殺害事件、そして若い白人女性の失踪事件が起こります。
黒人女性の事件には一顧もしなかった住民たちは、仲間である女性の行方を探す為、仕事を休んで捜索隊を組織します。
2つの事件に関連はあるのか。そして、行方不明となった白人女性は発見できるのか?
当時のデトロイト社会情勢を背景にしたミステリ。

一応はミステリ作品らしいのですが、最後に真相が明らかになり事件が解明される、といった定番パターンに本作品は当てはまりません。
女性が見つからないまま日が経つにつれ、住民たちの間に不穏な空気が増していきます。
その一つは、事件に関わるものか関わらないものか定かならぬまま、登場人物の一人一人が嘘を重ねていくところ。それがさらに本ストーリィにおける不穏さをさらに深めていきます。
その不穏さこそが、本ストーリィの主軸と感じます。

題名にある「彼女」とは誰のことか。
単純に考えれば、失踪した女性のことでしょう。しかし、本書題名はそれに留まらず、本ストーリィに登場する女性たちが本来の居場所に戻り平穏を取り戻すまで、という意味に捉えた方が本作品の意図をつかめるような気がします。

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