キャサリン・パターソン作品のページ


Katherine Paterson  1932年米国人宣教師の娘として中国に生まれる。米国に帰国して大学卒業後小学校の教師。57年より4年間日本にも滞在。「テラビシアにかける橋」「海は知っていた」(共に1981年)にてニューベリー賞、98年国際アンデルセン賞を受賞。

 


  

●「テラビシアにかける橋」● ★★       ニューベリー賞
 原題:"BRIDGE TO TERABITHIA"      訳:岡本浜江




1977年発表

1981年03月
偕成社刊

2007年03月
偕成社文庫化
(700円+税)

 

2008/02/24

 

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映画を観て原作にも興味が生じ、読んだ本です。
その映画がとても良く出来た作品であり、主役の一人レスリーを演じたアンナソフィア・ロブの印象が鮮烈だった所為で、映画のストーリィをもう一度なぞるような読み方になってしまいました。
ですから、何も知らずに原作を読んだのとは、かなり異なる感想になっているかと思います。

主人公ジェシーは子供4人の中で唯一の男の子という、女ばかりに囲まれて暮らす少年。姉2人は自儘で家の手伝いはレスリー一人に押しつけられているという恰好。おまけにレスリーが好きな絵については誰にも理解されないという状況。
そんな中、隣家に引っ越してきた少女レスリーは、風変わりな少女。そのレスリーに誘い込まれ、2人は川の向こう側にある森の中に小屋を作り、夢の王国“テラビシア”とその城に見立て、空想をめぐらせて遊ぶようになります。
しかし、事故によって再びジェシーは一人取り残されてしまう。レスリーによって一度喜びを見い出してしまった後だけに、ジェシーにとってはかえって辛いこと。レスリーに裏切られたという思いすら感じてしまいます。
この喪失感、私はいつもヘミングウェイ「武器よさらば」の最後を思い出してしまうのですが、本人にとってどれ程辛いことか。
しかし、そこから後が「武器」と違うところ。
ジェシーは“テラビシア”を再度見い出すことができるのか、そしてそうするためにジェシーには何が必要だったのか。そのところに作者のメッセージが籠められていると感じます。

空想の国=テラビシア。映画ではファンタジー部分としてリアルに見て味わうことができましたが、原作でそれはあくまで2人の頭の中だけのこと。その楽しさという点で、原作は映画に劣ります。
でもその分、レスリーを失った後のジェシーの喪失感の大きさ、そして彼が立ち直る過程はより深く描かれています。
ファンタジーという魅力ある映画と、孤独な少年の成長物語としての魅力ある原作。
原作を読むと、映画作品の魅力も改めて蘇ってきます。

 ※映画化 → 「テラビシアにかける橋

           


 

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