トニー・パーソンズ作品のページ


Tony Parsons 1955年英国生。New Musical Expressにて記者として活躍、The Sundy Times等にてコラムを担当。また、G・グリーアとコンビを組んだTV番組The Late Reviewが人気番組となる。処女小説「ビューティフル・ボーイ」はベストセラーになり、2000年の“ブック・オブ・ザ・イヤー”賞を受賞。現在は日本人の由里子夫人とロンドン在住。

 


   

●「ビューティフル・ボーイ」●  ★☆
 
原題:Man and Boy”




1999年発表

2001年5月
河出書房新社
(1600円+税)

 

2001/07/05

テレビ番組プロデューサーのハリー・シルバーは、ただ一度の浮気がばれて、妻のジーナに出て行かれてしまいます。更に突然仕事も首になってしまうという、まさに踏んだり蹴ったり、30歳にて不幸を一人で抱え込んでしまったような状況。
ジーナの父親の元に残された4歳の一人息子パットを取り戻したのはいいけれど、ハリーは失業者兼シングル・ファザーの重荷を背負う結果となります。
突然妻に去られた夫がシングル・ファザーとして奮闘、家族愛に目覚めるといったストーリィーは、度々繰り返される定番ストーリィのようです。思い出すのは、ダスティン・ホフマンが主演して評判になった映画「クレイマー・クレイマー」
本作品の特徴は、単にシングル・ファザーとしての奮闘記に留まらず、ロマンテイックな夢ばかり追っていたハリーという主人公が、子育てに奮闘しながら、初めて自立した人間に成長していくストーリィにある、と言えるでしょう。
彼は息子パットに対しても、新しい恋人シドに対しても、常に自信なげな様子です。その度にハリーが思い浮かべるのは、自信にみちて常に頼もしかった自分の父親の姿。自分と父親、自分とパットの関係を繰り返し比較しながら、息子にとって、自分にとって一番大切なものは何なのか、とハリーは考えるに至ります。
英米では広く共感を呼びそうなストーリィですが、日本では未だそこまで至っていないでしょう。したがって、感動もイギリス程には至りません。
でも、ハリーが自分の父親を改めて見つめ直すストーリィには、新鮮さがあります。後味は極めて爽やかです。

重松清「幼な子われらに生まれ」と読み比べることをお薦めします。

 


   

to Top Page     to 海外作家 Index