クレメンス・マイヤー作品のページ


Clemens Meyer  1977年東ドイツ・ハレ生。建設作業、家具運送、警備等の仕事を経て98年から2003年までライプツィヒ・ドイツ文学研究所に学ぶ。ドイツ再統一前後の東ドイツの不良少年たちのリアルな生態を描いた初長篇「おれたちが夢見た頃」は“東独版トレインスポッティング”等と評されベストセラーに。多数の文学賞を受賞し、舞台化もされる。2作目となる「夜と灯りと」にてライプツィヒ・ブック・フェア文学賞を受賞。

 


   

●「夜と灯りと」● ★☆      ライプツィヒ・ブック・フェア文学賞
 
原題:"Die Nacht,die Lichter"        訳:杵渕博樹

  

 
2008年発表

2010年03月
新潮社刊

(1900円+税)

 

2010/04/15

 

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率直に言って、どの篇も、よく判らないストーリィである。
そのうえ現在と過去が入り乱れるので、なおのこと混乱します。
さらに、ストーリィらしいストーリィが、そもそもあるのかないのか。
それでもはっきりしていることは、各篇主人公の「今」がそこにあること。
気力のない失業者や服役者、ドラッグ中毒者、小学生の女の子の恋する教師、ホモの美人局等々、ろくでもない人物ばかりとしても。

紹介文によると、本短篇集は「東西統一後のドイツで「負け組」として生きる人間たちの姿を、彼ら自身の視点から鮮やかに描き出す12の物語」とのこと。
だからといって、本短篇集に、打ちひしがれた人間の陰鬱、絶望感、今の状況を呪うような雰囲気は感じられません。
ただ、現在の状況をあるがままに受け入れている、といった風。

作者は統一前の東独生まれ、いろいろな職の労働を経験してきたらしい。自らそうした道を辿ってきたという事実こそ、この作者の強みなのではないでしょうか。
決して想像からだけ生まれた話ではありません。実際にある事実のひとつである、そんな作者の確信を感じます。
よく判らないストーリィではあるけれど、そこには乾いた明るさがあります。その点が印象的。

小さな死/南米を待つ/銃と街灯とメアリー・モンロー/デブは恋してる/犬と馬のこと/夜と灯りと/おれたちは旅する/ヨハネス・フェッターマンの短くも幸福な生涯/川への旅/通路にて/君の髪はきれいだ/老人が動物たちを葬る

 



新潮クレスト・ブックス

    

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