マーシャ・メヘラーン作品のページ


Marsha Mehran
 イラン革命直前にテヘランに生まれる。80年代に家族と共に動乱から逃れてアルゼンチンに渡る。両親がブエノスアイレスで中東風カフェを営み、自身は同地のスコットランド系学校で教育を受ける。アメリカ、オーストラリア、アイルランドで暮らし、現在はアイルランド人の夫と共にニューヨーク在住。2005年「柘榴のスープ」にて作家デビュー。

 


                   

●「柘榴のスープ」● ★★
 
原題:"Pomegranate Soup"      訳:渡辺佐智江

  

 
2005年発表

2006年07月
白水社刊
(2000円+税)

  

2012/02/12

  

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アイルランドの田舎町に突然ペルシア料理店を開いた若いイラン人三姉妹を、ペルシア料理と共に描いた物語。

ずっと閉じられたままだったペーストリー店から、ある朝奇妙な、異国的な匂いが漂ってきます。
そこはロンドンからやってきて僅か5日間の奮闘で開店にこぎつけた
マルジャーン、バハール、レイラーのイラン人3姉妹が開いた料理店<バビロン・カフェ>。
家主の未亡人は3姉妹を歓迎して店を貸してくれたものの、異国情緒溢れるその店の様子に警戒心を示す住人、好奇心を抱く住人と、そこはいろいろです。
町を牛耳るパブ店経営者の
トマス・マクガイアは、三姉妹を“外人”と決めつけ敵対視する筆頭ですが、じきにカフェは町の人々に受け入れられていく。
とはいうものの、それなりに衝突、揉め事、いざこざが起きていきます。そもそも革命を逃れて英国に脱出したイラン人の三姉妹が、何故アイルランドのこんな田舎町にやってきて店を開こうとしたのか。そこにはそれなりの事情があり、それは徐々に明らかにされていきます。

イラン革命によって人生を変えられた亡命イラン人の姿を描くという面は否定できないものの、スパイシーなペルシア料理と共に三姉妹がバリナクロウという田舎町に溶け込んでいく様子が楽しく、心温まります。
また各章の冒頭には、マルジャーンが作るペルシア料理のレシピが付されていて、その点も興味津々。
アイルランドの田舎町の物語、でもイラン革命にも思いを馳せる物語。そして官能的なスパイスの香りに心誘われる物語、です。

     


   

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