ジェラルディン・マコックラン作品のページ


Geraldine McCaughrean  1951年英国生、「不思議を売る男」にて88年カーネギー賞および89年ガーディアン賞、2004年「世界は終わらない」にてウィットブレッド賞児童書部門、18年「世界のはての少年」にて2度目のカーネギー賞を受賞。

 


               

「世界のはての少年」 ★★★              カーネギー賞
 原題:"Where the World Ends"   
   訳:杉田七重


世界のはての少年

2017年発表

2019年09月
東京創元社
(2800円+税)



2019/11/21



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少年たちが無人島に置き去りになる・・・と聞いてすぐ思い出すのは、ジュール・ヴェルヌ「十五少年漂流記」
しかし、「十五少年」はあくまで冒険物語ですし、漂流して行き着いた先は、無人島ながら一応は食糧や木という材料も手に入るれっきとした<島>。
ところが、本作で少年たちが取り残されるのは島にあらずして、絶海の単なる<岩>、鳥を捕らえて食料や油にすることはできても、木などまるで生えていない場所なのです。

スコットランドの西方にある
セント・キルダ諸島、その中で一番大きなヒルタ島では、少年たちの試練と海鳥の大量捕獲という目的から、海鳥が襲来する<戦士の岩>という小さな岩島に3週間滞在するというのが習わし。
今回、少年9人と大人3人が岩へ渡ったが、3週間経っても迎えの船が来ない・・・・。
これは、1727年の夏、実際に起きた出来事だそうです。ただし、詳細な記録は殆ど残っておらず、ストーリィ自体は作者によるフィクション。

迎えに来るはずの船が来ない・・・それは何故? 世界が滅びてしまったのか、あるいは自分たちが見捨てられたのか。
その絶望感と恐怖感、想像するだけでも身の内が震えてくる気がします。とにかく凄い・・・・。
そうした中、どうやって少年たちは生き延びたのか、生きる気持ちを持ち続けたのか、が読み処です。

3人の大人は頼りにならない。最年長の
クイリアムは何とか子供たちの気持ちを奮い立たせようと、各自に「○○の番人」という役割を与えます。
そしてクイリアム自身はというと、憧れの女性と想像の中で会話を繰り返し、自分の気持ちを支えてもらう。

いやあ、余りに過酷、そして凄絶なストーリィ。いくら正常な考えを維持しようとしても、幻覚や狂気が忍び寄ってきます。
クイリアムの想像の中での会話は、賢明な対処方法だったのではないでしょうか。
極限状態に置かれた時、人間は、そして私は、どう行動するのかと何度も問い質された気がします。
9ヶ月を経た最後、心が救われたような気持ちになりました。

凄い小説です。是非、お薦め!


1.船出/2.カツオドリの王/3.二か月前、ヒルダ/4.遅れ/5.疑いと恐怖/6.告解/7.奇跡/8.追放/9.番人/10.歓迎の帰還/11.サウル王のズボン/12.海を渡る/13.言葉と沈黙/14.とりつかれて/15.光/16.嵐/17.とむらい/18.春先の憂鬱/19.モンスターたち/20.魔女狩り/21.白い船/22.音楽と愛

   


   

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