トム・マッカーシー作品のページ


Tom McCarthy  1969年英国ロンドン生、オックスフォード大学英文科卒。プラハ、ベルリン、アムステルダムで様々な職を経験し、90年代初頭にロンドンに戻る。虚構アート集団「国際ネクロノーティカル協会」で活動する一方、処女小説「もう一度」を2001年に書き上げるが、英国の出版社から軒並み拒絶されたが、4年後にパリの小さな美術系出版社から漸く刊行。その後絶賛を浴びる。

 


                

「もう一度」 ★★
 
原題:"REMAINDER"    訳:栩木(とちぎ)玲子


もう一度画像

2006年発表

201年01月
新潮社刊

(2100円+税)

  

2014/03/04

  

amazon.co.jp

事故による昏睡から目覚めた主人公、その事故についての記憶を一切失っていたにもかかわらず、その事故に関わることについて黙秘を守るという見返りに 850万ポンドもの大金を手に入れます。
しかし、かえってその経緯に現実感を持てない主人公、あろうことか入手した大金を惜しげもなく使って事故を再演し、自分が納得できるリアリティを手に入れようとする・・・・というストーリィ。

およそ考えられない謎めいた示談に始まり、およそ考えられない行動をとり始める主人公。
現実の事件を微細にわたって再現しようと、オンボロ建物まで買い取り、再演者たちを雇ってまで事実を再現しようとする主人公の行動は、頁を繰るに連れどんどんエスカレートしていきます。
そこにあるのはまるで狂気としか言いようのない固執、妄想、執念、エトセトラ。それは怒涛のようにエネルギーを高めていき、読み手まで巻き込んでしまいます。そしておそらくは、主人公自身までも。
その行き着いた果てと言えば、あぁ!何と・・・・。

本作品を一言で表せば、驚くべき、そして狂気のようなエネルギーを充満させた長編小説、と言うに尽きます。
ですから、本ストーリィを丹念に読む必要はないのではないか。本作品のもつエネルギーに、ただただ、引き摺られて読み進んでいけばよいのではないか、そう感じます。

    



新潮クレスト・ブックス

      

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