ヤン・マーテル作品のページ


Yann Martel 1963年スペインで外交官の家に生まれ、幼少・青年時代をコスタリカ、フランス、アラスカ、カナダで過ごし、大人になってからもイラン、トルコ、インドと世界中を転々とする。トレント大学で哲学を学んだ後、植栽、皿洗い、警備員等の仕事をする傍ら執筆活動を開始。2002年「パイの物語」にて英国ブッカー賞を受賞。

 


     

「パイの物語」 ★★☆               ブッカー賞
 原題:"Life of Pi"     訳:唐沢則幸

 
パイの物語画像
 
2001年発表

2004年04月
竹書房刊


2012年11月
竹書房文庫
上下
(各648円+税)

   

2013/03/06

  

amazon.co.jp

映画ライフ・オブ・パイの原作。映画を観た後原作が英国ブッカー賞を受賞していると知って、原作も是非読んでみようと思った次第。
インドで動物園を経営していた一家がカナダへ移住を決意。動物と共に貨物船に乗り込み太平洋を横断中、嵐に遭って船は沈没。16歳の
パイ・パテルは救命ボートに放り込まれただ一人生き残ります。
ところが折角生きながらえたパイが抱えた大きな問題は、救命ボートには幾匹かの動物まで乗り込んでいたこと。シマウマ、ハイエナ、オランウータン、そして3歳のベンガルトラ“
リチャード・パーカー”まで。結果的に救命ボートの上に生き残ったのは、パイとリチャード・パーカーのみ。
本書は、一人&一匹の 227日に亘る太平洋漂流記です。

ベンガルトラと漂流とは、何と悲劇に重ねての過酷な運命かと思うのですが、次第に印象は変わってきます。リチャード・パーカーがいたからこそパイは常に緊張と思考を強いられ、その結果長い漂流生活を耐え抜くことができたのではないかと思われるからです。
自分が生き続けるためには、自身の水食糧だけでなく、リチャード・パーカーの水食糧まで確保しなくてはならない(自分が喰われないために)。後半、リチャード・パーカーのフンの後始末までやり出したという展開には思わず笑ってしまいます。
その一方、リチャード・パーカーがいる救命ボートからロープに繋がって離れ、ライフジャケットとオールによる急造のいかだの上で多くの時間を過ごすパイは、足下の海面の下に多くの生き物が住んでいる光景を見いだして感動と神秘に打ち震えます。
映画での幻想的なシーン、映画だからこそのことと思っていましたが、それは原作どおりのものでした。

映画とはまた違った印象、感動あり。またこの原作を読んだ後に映画を観ても新たな感動があると思います。
原作、映画、併せてお薦めです。

 
覚え書きとして/1.トロントとポンディシェリ/2.太平洋/3.メキシコ、トマトラン、ベニート、フワレス診療所

※映画化 →「ライフ・オブ・パイ

        


      

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