サムイル・マルシャーク作品のページ


Samuil Marshak ロシアの詩人。帝政時代のロシアの貧しい労働者の家に生まれる。ユダヤ系として迫害を受けるが、早くから文才を現し、ゴーリキイの援助を受ける。革命後ソビエト最初の子供劇場を作った。

 


  

●「森は生きている」● ★★★
 
原題:"DVENADTSAT MESYATSEV"     訳:湯浅芳子




1946年発表

1853年2月
岩波少年文庫
2000年11月改版
(640円+税)

 

2003/01/19

本作品は、新年を迎える大晦日の晩には1月から12月までの月の精が森の中に勢揃いするという、スラブ伝説を元にしたロシアの児童劇。
継母義姉に、主人公である「ままむすめ」が貧しい身なりをさせられ、女中のようにこき使われているという設定は、まさしくロシアの“シンデレラ物語”。
それにも拘らず、真冬の森の中でもままむすめが生き生きとしている様子は、ロシア農民の逞しさを感じさせられます。

ストーリィは、次のとおり。
気まぐれで我儘な娘=女王が、真冬に4月に咲くマツユキソウを摘んで来るよう、国中にお触れを出します。欲張りな継母に命じられ、夜の森へマツユキソウを摘みに行かされたままむすめは、そこで12人の月の精に出会い、マツユキソウを手に入れます。そのマツユキソウの咲く場所を見つけようと、継母らと女王一行は娘の跡を追いますが、吹雪に見舞われ、懲らしめられることとなります。
本作品が単なる勧善懲悪のシンデレラ物語に終わらないのは、ままむすめと女王が2人ともみなし子でありながら、片や明るく素直であるのに対し、一方は我儘で横暴と、対照的に設定されている故。女王は冬の森での経験により、謙虚に学ぶことの大切さを教わるに至ります。
なお、本作品のもうひとつの魅力は、冬の森の印象的な美しさ。それは、作者マルシャークが本来詩人であることと無縁ではないでしょう。

 


   

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