ロイス・ローリー作品のページ


Lois Lowry
 1937年米国ハワイ生。11歳から13歳までを日本で過ごす。アメリカを代表する児童文学作家。「ふたりの星」と「ザ・ギバー」にてニューベリー賞を2度受賞。

 


   

●「ザ・ギバー 記憶を伝える者」● ★☆     ニューベリー賞
 原題:"THE GIVER"      訳:掛川恭子

  

 
1995年9月
講談社刊

(1400円+税)

 

2004/12/11

人々の生活、そして人生が画一化された近未来社会を舞台にした児童向けSF小説。
子供たちは12歳になると、将来就くことになる<職業任命>を受けます。しかし、本書の主人公ジョーナスが任命されたのは、“記憶を受けつぐ者”という驚くべき役割だった。
それは、“記憶を伝える者(ザ・ギバー)”から人類の過去の記憶を世代でただ一人受け継ぐという名誉な地位。
画一化された安全な社会を築き上げるために、誰か一人が犠牲となって過去の記憶を伝えていく必要があった、という訳。

前半部分で、舞台となった未来社会が過剰に統制された社会であることにすぐ気付きます。
本書を読んで私がすぐ思い出すのは、近未来社会を風刺的に描いたオルダス・ハックスリー「すばらしい新世界」。安全な社会が築かれる一方で、やはり喜怒哀楽という人間の自然な感情が抹殺されていました。その象徴となったのが「シェイクスピア」等本の抹殺。
本書でもまた本が秘匿されており、どうも未来社会においては本、とくに小説は目の敵にされるらしい。

そんな画一化された無味乾燥な社会を打開しようと、“伝える者”と“受けつぐ者”2人が行動に出るというストーリィ。
結末は、ちょっとはっきりしないところがあります。でも、子供たちへの警鐘としては、このくらいの方がファンタジー風で良いのかもしれません。

      


 

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