モーリス・ルブラン作品のページ


Maurice Leblanc  1864-1941年フランス・ノルマンディー地方の都市ルーアン生、地元のコルネイユ高等学校卒。ロースクール落第後純文学作家となるが評価されず。1905年「アルセーヌ・ルパンの逮捕」が評判を博し、“アルセーヌ・ルパン”シリーズにて人気作家となり、名声と経済的成功を収め、レジオンドヌール勲章の授与を受ける。


1.怪盗ルパン 二つえくぼの女

2.
ルパン、最後の恋

 


     

1.
怪盗ルパン 二つえくぼの女 ★
 
原題:"Arsene Lupin La femme aux deux sourires"      訳:保篠龍緒


怪盗ルパン 二つえくぼの女

1933年発表

2019年01月
河出書房新社

(1950円+税)



2019/02/27



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河出“レトロ図書館”シリーズの中の一冊。
底本は、1968年12月日本文芸社刊行の「カラー版ルパン全集」14巻だそうです。

まず、訳文が古めかしいなぁ、というのが第一印象。
あえて言えばやたら講談調、その所為か、スマートな好漢の筈のルパンが下卑て感じられてしまうところが残念至極。

題名から未読の作品と思ったのですが、原題は
「ふたつの微笑を持つ女」であり、それなら創元推理文庫版で既読でした。
しかし、如何せん47年も前の読書、読んでいても既読であるとは全く思い出せませんでした(訳の違いも大きいのでは、と言い訳したいところ)。
それはともかくとして、「二つえくぼ」は誤訳でしょう。

凶賊を追う
ジョルジューレ警部を時にコケにし、時に競い合いながら、15年前に起きた歌姫エリザベス・オルナン謎の死とその首飾り紛失事件の真相をルパンが解き明かす、というストーリィ。
それに絡めて
、金髪のクララあるいはアントワーヌと呼ばれる美女とルパンとのラブ・ロマンスが描かれます。

率直に言ってルパンものストーリィとしては、かなり物足りず。
また、ルパンものラブ・ロマンスとしても同様です。
ルパンものラブ・ロマンスなら、「八点鐘」や「緑の目の令嬢」の方がずっと良かったですね。
折角読んだのに残念。本来、ルパンものはもっと面白い筈です。


古城の悲劇−歌姫の怪死/消えた首飾り
金髪のクララ−サン・ラザール駅/尾行/地階の紳士/グラン・ポールの情婦
アルセーヌ・ルパンだ−母の手紙/警部撃退/エルルモン侯爵
怪盗対凶賊−押込強盗/謎の写真/美貌の闖入者/グラン・ポール/謎?謎?謎?
凶賊追撃−古城入札/刑事に一撃/奇怪な申し出/遺産の奪還/ヴァルテックス/七月三日、午後四時/アントワーヌの寝室/大胆不敵
仮面の舞姫−バアの地下室/狩り込み/カジノ・ブルー/やや!金髪の女/危機一髪/機略縦横
虎視耽々−二つえくぼ/夢の一週間/監視/偽手紙
繊手殺人−襲撃/恋敵/秘密の暴露/鉄拳/クララの早業/失踪/クララの逮捕/警部夫人
二つえくぼの謎−ルパンの苦悶/クララの出現/クララの告白/幻の面影
警部狂乱−アントワーヌ/アリバイ成立/侯爵の出頭/新事実/興廃この一戦/鉄の扉
隕石の犯罪−七月三日、午後四時/ルパンの活躍/犯人は・・・/最後の唇

            

2.

「ルパン、最後の恋」 ★
 
原題:"LE DERNIER AMOUR D'ARSENE LUPIN"      訳:平岡敦

  
ルパン、最後の恋
 
2012年発表

2012年09月
早川書房刊

(1300円+税)

2013年07月
創元推理文庫


2013/02/02


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小学生時代(ポプラ社南洋一郎訳)、高校生時代(新潮文庫堀口大學訳、創元推理文庫)と熱中して読んだ“怪盗アルセーヌ・ルパン”シリーズ最終作。
2012年05月、ルブランの死後70年目にして未発表のルパン・シリーズ最終作が出版され、世間を驚かせたのだそうです。それが本書。
ルブランが発表しなかったからにはそれなりの理由があったのですし、今更読みたい気持ちもそうはないなぁと思って暫く見送っていたのですが、かつて熱中したシリーズの最後を締める作品であるからには一応読んでおこうと、考え直して読んだ一冊。 
 
美貌の令嬢
コラを遺して自殺したレルヌ大公。その娘あての遺書には、コラを囲む4人の友人男性の中にアルセーヌ・ルパンがいる、信頼に足る人物なので見つけ出して頼るといい、きっと支えになってくれるだろう、とあった。
しかし、そのコラを巡って何やら陰謀のような動き。コラを守るため、ルパンが正体定かではない強敵と闘う、というのが本書ストーリィ。
率直に言って、余り面白いとは思えませんでした。粗削りで躍動感がなく、昔親しんだルパンの活躍ぶりとは大違いで、そもそもルパンでなくても良いのじゃないか、と思うところ多。まぁ未発表作とはそんなものでしょう。

※なお、本書は2つのおまけ付き。
ひとつは、ルパン第1作にあたる
「アルセーヌ・ルパンの逮捕」の雑誌掲載版(単行本掲載にあたり改稿される前の初版)。
もうひとつは、ルブランのエッセイ
「アルセーヌ・ルパンとは何者か?」

      

読書りすと(ルブラン作品)

   


         

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