アントワーヌ・ローラン作品のページ


Antoine Laurain  1970年代初頭、フランスのパリ生。大学で映画を専攻後、シナリオを書きながら短編映画を撮り、パリの骨董屋で働く。自分そっくりの18世紀の人物画を手に入れたコレクターをめぐる小説「行けるなら別の場所で」にて作家デビューしドゥルオー賞、4作目となる「ミッテランの帽子」にてランデルノー賞およびルシ・デ・ワイヤジュール賞を受賞。


1.ミッテランの帽子

2.赤いモレスキンの女

 


                                   

1.
「ミッテランの帽子」 ★★★ ランデルノー賞、ルレ・デ・ヴォアイヤジュール賞
 
原題:"Le Chapeau de Mitterrand"     訳:吉田洋之


ミッテランの帽子

2012年発表

2018年12月
新潮社

(1900円+税)



2019/01/25



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1986年の議会選挙で大敗した仏大統領フランソワ・ミッテランが、再びその座を取り戻すまでの2年間を背景にした物語。

うだつの上がらない会計士
ダルニエ・メルシエがふと入ったブラッスリー。何とその隣席に、ミッテランが着席。
そのミッテランが置き忘れて行ったフェルト帽、ダニエルはついその帽子を手に取って店を出てしまいます。
しかし、そのミッテランの帽子が、手に取った人々の運命を変えていく。
まずはダニエル、次いで見込みのない不倫関係から抜き出せないでいた
ファニー・マルカン、長いスランプに沈んでいた天才調香師のピエール・アスラン、そして最後は資産家のベルナール・ラヴァリール

とにかく最初から面白い。何と言っても、あのミッテランの<帽子>が重要な脇役を果たしているのですから。
そして、ストーリィ全体が、温かみのあるユーモラスな雰囲気に包まれていると言って過言ではありません。
帽子が4人の手を次々と渡っていく経緯、その彼らの運命を変えてしまう様子が何といっても楽しい。
ストーリィ展開は歯切れよく、シンプルかつ明快。そしてテンポも良し。

それだけでも十分面白かったのですが、最後のエピローグがまた抜群。
エピローグが、それまでの面白さをさらにもう一段、グン!と引き上げた感じで、もう興奮しました。
軽く読めて面白く、飽きることのない傑作。是非、お薦め!

                            

2.
「赤いモレスキンの女」 ★★★
 
原題:"La Femme au Carnet Rouge"     訳:吉田洋之


赤いモレスキンの女

2014年発表

2020年12月
新潮社

(1800円+税)



2021/01/23



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これはもうサイコー!の魅力。年初からこうした作品に出会えたことは幸せ、という一言に尽きます。

大人の、恋の冒険譚、ミステリという風味付き。

冒頭、一人の女性がタクシーを降り、自宅建物の鍵を開けようとしたところで強盗に襲われるところから始まります。
ハンドバックを奪われ、頭を鉄扉に叩きつけられるという目に遭う。何とか向かい側のホテルに辿り着き宿をとったものの、翌朝昏睡状態にあるのをホテルの従業員が発見します。

一方、本書の主人公で書店主である
ローラン。通りがかったゴミ箱の上に見事な状態のハンドバックが置かれているのを見つけ、とりあえず家に持ち帰ります。
バッグの中には、作家モディアノのサイン本、彼女の思いを綴った
赤いモレスキンの手帳、そして身の回りの品等々。
バッグの持ち主女性に関心を惹きつけられたローランは、
「ロール」という名前しか分からないその見知らぬ女性を捜すため、パリの街を歩き回ります。

とにかくそこからの展開が素晴らしい。偶然がもたらした機会、ロマンティックな香りと、ミステリアスな刺激。これはもう堪りません。
さらに、洒落た品格ある文章の合間に手紙文や日記文が混ざり、本ストーリィの文章を辿るだけで見知らぬ街中を何かを求めて巡り歩くような、ワクワクする楽しさを感じます。

しかし、中年男性の恋は猪突猛進とは行かないもの。そこに思い切った波紋を立てるのが、離婚して元妻と暮らしている15歳の娘=
クロエ
その後の展開が、これまた何とも魅力的なのです。

本作の魅力を感じるには、本作を読んでもらうしかありません。
是非、お薦め!

    



新潮クレスト・ブックス

      

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