キム・チョヨプ作品のページ


Kim Choyeop(金草葉) 1993年韓国生、浦項工科大学化学科卒、同大学院で生化学修士号を取得。在学中の2017年、第2回韓国科学文学賞中短編部門において、「館内紛失」にて大賞、「わたしたちが光の速さで進めないなら」にて佳作を受賞し、作家活動をスタート。

 


                           

「わたしたちが光の速さで進めないなら」 ★★
 原題:"If we can't go at the speed of light"
 
 訳:カン・バンファ、ユン・ジョン


わたしたちが光の速さで進めないなら

2019年発表

2020年12月
早川書房

(1800円+税)



2021/02/03



amazon.co.jp

韓国でベストセラーとなったSF短篇集とのこと。

内容は確かにSF。未来であり、地球から宇宙へと広がった時代を描くストーリィ等々です。
けれど、不思議とSFという感覚はあまり覚えません。
各篇から強く感じるのは、別離だったり、立ち去る人の見送りだったりと、そこには寂しさや哀感が漂います。

そうした想いに、現代も未来も変わりはない筈。
舞台はSFであっても、そこに描かれているのは現代と変らぬ問題、と感じるからでしょう。
現実に、各篇ストーリィでは、差別や孤独や母子問題が描かれていますから。
ひんやりとした清新さ、それと同時にどこか懐かしい、という想いも抱かされるSF短篇集。

「巡礼者たちはなぜ帰らない」:ユートピアと言える村から、なぜ主人公は飛び立っていったのか・・・。
「スペクトラム」:宇宙船事故から40年後に救出された祖母。自分は異星人に出会ったと孫に語るのですが・・・。
「共生仮説」:天才少女が絵として描いた惑星、やがて絵にそっくりの惑星が発見されるのですが・・・。
「わたしたちが光の速さで進めないなら」:宇宙船の出発をずっと待ち続ける老女。その胸の内にあるものは・・・。
「感情の物性」:感情そのものを造形化したという製品。その是非は・・・。
「館内紛失」:図書館に保存されていた筈の亡母のマインドが見つからない・・・いったい誰が何のために?
「わたしたちのスペースヒーローについて」:宇宙飛行士としてヒーローだった筈のおば。なぜ彼女は、期待を裏切るよう行動をとったのか?

巡礼者たちはなぜ帰らない/スペクトラム/共生仮説/わたしたちが光の速さで進めないなら/感情の物性/館内紛失/わたしたちのスペースヒーローについて

    


    

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