ジョージーナ・ハーディング作品のページ


Georgina Harding 
1955年英国生。ロンドンの出版界で働いた後、80年に来日。翌年まで東京で編集の仕事に従事。以後アジア各地、ヨーロッパ大陸を旅してまわる。90年チャウシェスク政権下のルーマニア紀行“In Another Europe”、93年インド南東部トランクェーバーで一歳の息子と暮らした体験を綴った“Tranquebar: A Season in South India”を刊行。2007年刊行の「極北で」が初の小説作品。現在はエセックス州コールチェスター在住。

 


 

●「極北で」● ★★
 原題:"The Solitude of Thomas Cave"     訳:小竹由美子

  


2007年発表

2009年02月
新潮社刊

(1900円+税)


2009/03/25


amazon.co.jp

1616年、夏が終わろうとする北極海の孤島。その島に一人の男を残して捕鯨船が出発しようとしている。
極寒の地に建つ小屋でたった一人越冬しようとしている男は、トーマス・ケイヴ
果たして生き延び、捕鯨船が再び戻ってくるのを彼が目にできるのかどうか、それは定かではない。だからこそ、一人で岸に佇むケイヴと、遠ざかっていく船上の乗組員たちの間には、厳粛な沈黙が横たわっています。
売り言葉に買い言葉から賭けとなり、トーマス・ケイヴは島に残ることを選んだのですが、彼には人々から離れ、孤独に身を置きたいという動機があったのではないか。
太陽の光も消えた極地で一人過ごす、ケイヴの孤独な日々。その彼の元に現れる幻影。
ケイヴが極地で過ごした前後を、ケイヴと親しんだ若いトマス・グッドラードが彼について語るという3部構成。

人が人らしく生きるためには何が必要なのか。そのことについて考えさせられると共に、大自然に対する人間の微力、大自然への敬虔な思いを描いた素朴なストーリィ。
本書を読み終えたとき、自分もまたそれら敬虔な思いをケイヴと共有していることに気づきます。

          


 
新潮クレスト・ブックス

 

to Top Page     to 海外作家 Index