テス・ギャラガー作品のページ


Tess Gallagher 
1943年米国ワシントン州ポート・アンジェルス生。ワシントン大学、アイオワ大学創作科に学ぶ。在学中から詩作を開始し、74年詩集“Stepping”刊行。79年作家レイモンド・カーヴァーと共に暮らし始め、88年入籍するが、その2ヵ月後にカーヴァーは病死。86年第一短篇集「馬を愛した男」を刊行。

 


 

●「ふくろう女の美容室」● ★★
 原題:"At the Owl Woman Saloon"     訳:橋本博美

  


1997年発表他

2008年07月
新潮社刊

(1900円+税)

 

2008/08/14

 

amazon.co.jp

何かを失ったことの寂寥感。それを自ら埋めるように心ないことをしてしまうことが人にはあるもの。
それを責めることなく、それでいいんだと労わってくれるような優しさがギャラガーの作品には感じられます。
そんなギャラガー作品の味わい、すぐにはつかめませんでした。どういうストーリィなのかよく分からないまま、あっさり終わってしまうところがありますので(短篇小説にはそんなこと、よくありますよね)。

「ふくろう女の美容室」、冒頭の表題作の雰囲気にまず魅せられます。
“アウルウーマン・サロン”という美容室の名前がなんとも不思議な雰囲気を醸し出しているところに、美容室だから女性だけの筈と主人公である女性客が寛ごうとしていると、何故か男性客が2人。
それでも彼女がこの美容室を好んでいるのは、ここに来ると精霊たちが見えるからだという。
短い一篇の中に様々な彩りが輝いているように見える、詩情感じる作品。
この「ふくろう女」を含め、美容室を舞台にした作品が3篇(ただし、ひとつはペット専門)。女性が安心して本性を見せられる場所だからでしょうか。

亡夫レイモンド・カーヴァー「大聖堂」と対を成すという、盲人の客とある夫婦の一晩を描いた作品が「キャンプファイヤーに降る雨」
カーヴァー作品を読んでいないのでどう共通し、どう相違しているのか皆目分らないのですが、幾度も「ミスターGの小説ではこう書かれているが・・・」という文章が挿入されていて、両作品を比べてみたらさぞ面白いかも、と思える一篇。

「仏のまなざし」、題名から我々に日本人が感じるイメージと、主人公である米国人女性の受け留め方の違い、題名と実際のストーリィのギャップがことの外面白く読める一篇です。他の篇と異なり、直接的ないい争いがあるところが、判り易い。
「祈る女」は、夫が隠していたラブレターの束をふとみつけてしまった人妻の話。ずっと妻の内心から語られ、最後のところでやっと夫の一言が登場するという構成が、何ともスパイシー。

エッセイは、各々自身の母親、父親について語った2篇。

ふくろう女の美容室/むかし、そんな奴がいた/生きものたち/石の箱/来る者と去る者/マイガン/ウッドリフさんのネクタイ/キャンプファイヤーに降る雨/仏のまなざし/祈る女
essay :聖なる場所/父の恋文

          


 
新潮クレスト・ブックス

 

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