チャールズ・フレイジャー作品のページ


Charles Frazier  1950年米国ノースカロライナ州の山間部生。デビュー作「コールドマウンテン」が発売と同時にベストセラーとなり、1997年度全米図書賞を受賞。

 


      

●「コールドマウンテン」● ★★☆        全米図書賞
 
原題:"COLD MOUNTAIN"     訳:土屋正雄

  

 
1997年発表

2000年02月
新潮社刊

2004年04月
新潮文庫刊
上下
(各629円+税)

 

2006/03/25

映画「コールドマウンテン」を観て、良い映画だったなぁと感じたのが読むに至った動機。
大抵は、原作をまず読んでいて映画化された作品にも興味を持って観るというパターンが多いのですが、珍しく本書はその逆。

アメリカの南北戦争を背景にした長篇小説というと、M・ミッチェル「風と共に去りぬ」と比較してしまうのは当然のことでしょう。でも、本書は「風と共に」とは全く異なるタイプの作品。
何よりも、飾らず、誇張せず、なすがまま自然にストーリィを書き綴っているという雰囲気が好い。
ですから、文庫本2冊の長篇といっても少しも苦にならず、読んでいて静かな満足感、楽しさを味わうことができる。そこがこの作品の魅力と言って良い。

南軍の兵士インマンは、戦争で傷を負い病院に収容されますが、戦争の虚しさに気づき脱走、恋人エイダのいる故郷コールドマウンテンへと 500キロの道のりを徒歩で向かいます。
一方、牧師の娘で綺麗な人形のように育てられてきたエイダは、父親の死後どうやって食べていけば良いのか判らない。そのエイダの元にやって来たのが、幼い頃からたった一人でも逞しく生き抜いてきた少女ルビー。ルビーの力を借りながらエイダは自活の道に踏み出します。
脱走兵を探す目を避けながら故郷を目指すインマンを描くストーリィ部分では、様々に生きるアメリカ人の姿が描かれます。特に女性の姿が印象的で、山羊飼いの老婆、赤ん坊を抱えた18歳の未亡人の姿は忘れ難い。
一方、エイダを描くストーリィ部分では、必要なものは全て自分達で作り出そうとするアメリカの開拓民らしい力強い姿を観ることが出来ます。
映画でもそうでしたが、私にとっては儚げなところのあるインマン、エイダよりも、逞しい生命力をもったルビーの方に魅せられます。
歴史小説、ラブ・ストーリィというよりも、アメリカの大地で生きる人々を飾るところなく描いた上質の文学作品と言いたい。

 ※ 映画化 → 「コールドマウンテン

 



新潮クレスト・ブックス

    

to Top Page     to 海外作家 Index