ミヒャエル・エンデ作品のページ


Michael Ende 1929〜95 南ドイツのガルミッシュ生。
当初俳優を、次いで劇作家を目指すが、1960年子供向けに書いた「ジム・ボタンの機関車大旅行」により1961年ドイツ児童文学賞を受賞し、児童文学作家に。73年「モモ」(ドイツ児童文学賞再受賞)、79年「はてしない物語」が代表的なファンタジー作品。

 
1.
モモ

2.はてしない物語

 


  

1.

●「モ モ」●  ★★★
副題:「時間どろぼうと ぬすまれた時間を人間にとりかえしてくれた 女の子のふしぎなものがたり」       訳:大島かおり

  

 
1973年発表

1976年09月
岩波書店刊
(1700円+税)

  

1996/12/08

 

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岩波書店から「エンデ全集」が刊行されたのをきっかけに読みました。大人向けの本のようですが、れっきとした児童書。その点ケストナーに似ている気がします。

ストーリィは次のとおり。
モモという不思議な女の子が円形競技場のような跡地に一人で住むようになります。つぎはぎだらけの大人の上着をきて、長いスカート、くしゃくしゃな頭の小さな女の子。ただ、その子のところへ行くと、大人も子供も素直な気持ちになって、楽しむことができる。聞き上手なのですね。
突然、町に灰色の男達がやってきて、大人から契約だといって時間をとりあげていく。その結果、誰もがせかせかしだし、生活に喜びを失い、金もうけだけを考えるようになります。モモは時間を司るマイスター・ホラーに会いに行き、ホラーの指図で人間に時間を取り戻すことに成功します。
皆に昔の笑顔が戻った!

時間の神様のような老人、カシオペアというその使いのカメ。時間という謎。何ともメルヘンチックなストーリィです。しかし、その中に痛烈な現代社会への批判があることを感じざるを得ません。
時間を一刻一刻と数え、時間を無駄にするな、と言っているのはどこの誰なのか。時間=コスト、時間をお金と結び付けて考える習慣を作ったのは、誰なのか。
児童文学というより、文明批評、文明への警告を内に秘めた大人のための童話ではないでしょうか。
と言いつつ、私自身、いつも追われるように本を読み飛ばしているのですから、あまり偉そうなことは言えません。(^^;)

    

2.

●「はてしない物語」●  ★★☆
 原題:“DIE UNENDLICHE GESCHICHTE”     訳:上田真而子・佐藤真理子

 


1979年発表

1982年06月
岩波書店刊
 
2005年08月
第54刷
(2860円+税)

 

2007/01/01

 

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「モモ」の次はこの作品をと思っているうち、読むまでに随分と時間がかかってしまいました。
「ネバー・エンディング・ストーリィ」という題名の映画にもなった作品。
読み始めて
びっくりしたのは、子供向き小説という割りにそのストーリィの長いこと。決して題名だけのことではなく、ストーリィ展開自体も本当に「はてしない」物語でした。

デブでいじめられっ子の少年バスチアン・バルタザール・ブックスがたまたま逃げ込んだ店の中でみつけたのは、「はてしない物語」という題名の本。
彼はその本が気になってそのまま盗み出してしまい、学校の物置部屋に閉じこもってその本を読み出します。
その物語は、ファンタージエン国という想像上の世界が虚無に徐々に侵食されていくという危機に見舞われるストーリィ。ファンタージエン国を救うため選ばれたのが少年アトレーユ。彼は途中知り合った白い幸いの竜フッフールと共に救い主を探す旅を続けます。
そこまでは映画と同じ、一旦ファンタージエン国は救われ、特に何ということもないストーリィと思ったのですが、ここまではほんの序章に過ぎなかった。
いつのまにかバスチアンは、物語の中で重要な鍵を握る人物となっていて、そしてついに物語の中に入り込んでいきます。

物語の中に入り込んだバスチアンこそ、本作品の本当の主人公。まずはファンタージエン国の救い主となり英雄となったものの、いつしか孤独で全てを失いかけた少年となってしまいます。そこに至って初めて彼は、何が一番大切であるかを漸く気付くことになります。
こうした展開、考えてみると人生に似ています。少年から青年となり、いろいろな経験を積んでやっと何が大切かを知るという。
バスチアンが積み重ねた長い物語は、人生になぞらえたものと理解すれば、その果てしなさが納得できようというものです。

最後にコリアンダー氏がバスチアンに語りかけた言葉の内に、作者エンデから読者への語りかけを感じます。
大人になっても子供の心を忘れることはない、忘れずに持っていることはできる。そしてそれは、いくつになっても希望や夢を抱いているということ。

 


 

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