ジェニファー・イーガン作品のページ


Jennifer Eganl  1962年米国シカゴ生、ペンシルヴァニア大卒。93年短篇集「Emerald City」を刊行、95年初長篇「インヴィジブル・サーカス」がベストセラーとなり、映画化。2010年刊行の長篇4作目「ならずものがやってくる」にてピュリッツアー賞・全米批評家協会賞・ロサンゼルスタイムズ文学賞・全英図書賞(国際部門)、17年刊行の長篇5作目「マンハッタン・ビーチ」にてアンドリュー・カーネギー・メダルを受賞。

 


               

「マンハッタン・ビーチ」 ★★☆      アンドリュー・カーネギー・メダル
 原題:"Manhattan Beach"   
   訳:中谷友紀子


マンハッタン・ビーチ

2017年発表

2019年07月
早川書房
(3500円+税)



2019/09/17



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第二次世界大戦下の1942年、米国NYにあるブルックリン海軍工廠で工員として働き始めた若い女性、19歳のアナ・ケリガンが本作の主人公。
そのアナ、海中での修理作業等を行う潜水士の様子を見て、自分も潜水士になりたいという望みを持つようになります。
しかし、現場責任者は女性に潜水士など無理と決めつけ、アナが結果を出してもそれを認めようとしない・・・・。

そのアナには、生まれつき重い障害をもつ
妹リディアがおり、アナは仕事の傍ら母親と2人で愛情をもってその世話をしている。
一方、
父親エディは5年前に失踪したまま行方知れず。
仕事で父親が何か関わりを持っていたらしい、ナイトクラブ等の経営者っでありギャングの一員でもある
デクスター・スタイルズが、エディ失踪の事情について何らか知っている筈とアナは思っている。
やがてアナは、デクスター・スタイルズと運命的な出会いをすることになりますが、その果にておいて潜水士の仕事が関わることになります・・・。

本作においては、デクスターと父親エディ2人の、思いに任せぬ人生の一幕も、アナのストーリィと並行して描かれます。
これがまた、それぞれ読み応えがあります。とくにエディが体験する過酷な○○の部分は、壮絶。
それでもやはり、本作の主役はアナに他なりません。

女性には無理だと言われた潜水士に成り遂げた他、若い女性の身での一人暮らし、そして人生において重大な出来事等々、自立心と強い意思を以てアナは道を切り拓いていきます。
大戦中、兵役のため男性が少なくなった中、その代わりを女性が担ったことで、戦後社会において女性の躍進が進んだと言われていますが、アナはまさにその先駆者と言える女性像でしょう。

潜水士の仕事をはじめ、重要部分での描写は実にリアルで、読み応え十分です。
だからこそ、女性たちの自立、仕事場や社会への進出という願いを込めたメッセージが力強く感じられます。 お薦め。

1.陸/2.影の世界/3.海を見る/4.闇/5.航海/6.潜水/7.海よ、海/8.霧

   


   

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