イサク・ディネセン作品のページ


Isak Dinesen  1885-1962 本名カーレン・クリステンツェ・ブリクセン。デンマークのルングステッドの地主の家に生まれる。1914年ケニアに渡り、夫のブリクセン男爵とコーヒー農園を経営。離婚後も経営を続けるが、四十代半ばで帰国。34年以降、男名イサク・ディネセンとカーレン・ブリクセンの二つの名で「七つのゴシック物語」「アフリカの日々」等を次々と発表。

 


             

「冬の物語」 ★★
 原題:"WINTER'S TALES" 
  訳:横山貞子 


冬の物語

1942年発表

2015年12月
新潮社刊

(2400円+税)

 


2016/01/15

 


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最近の文学作品と思いきや、ナチス占領下のデンマークで書かれた、作者自身が最も愛した短篇集とのこと。
イサク・ディネセン生誕 130周年ということでの刊行らしい。

本書の印象として、誰かに語って聞かせる、という想定に立って書かれた小説作品であるように感じます。
実際、著者がアフリカで農園を経営していた頃の愛人であったという英国人狩猟家デニス・フィンチ=ハットンは、物語を読むより聞く方を好んだことから、著者は沢山の物語を作っておくことにしていたという。そうしたエピソードを聞くと、本書短篇の印象が得心できるというものです。
また、各篇ストーリィの時代は古く、19世紀半ばから末に時代設定されているものが多い。冬の長いデンマークでの長い夜、デンマークの人々が父母、祖父母から聞かされていた昔語りと無縁ではない、ということらしい。

語るという前提から書かれているだけに文章は端的で判り易いのですが、その一方、前半と後半のストーリィが得てして別々のように感じられたりする等々、話の筋がつかみ難いという面もあります。
したがって、ストーリィに興が乗れば面白く読めますが、乗り損なうと何が何だか判らない、ということにもなりかねないので、ご注意の程。

ストーリィ内容はというと、誰かと誰かが結ばれるというようなハッピーエンドも、これといった悲劇もない。少々奇妙だったりする話もありますが、様々な人々がいて、語られるべき物語がそこにあった、という印象です。

収録11篇の中で特に惹かれたのは、
「少年水夫の話」「無敵の奴隷所有者たち」「夢を見る子」「ペーターとローサ」「悲しみの畑」
そして特筆すべき篇は
「女の英雄」。モーパッサンの名作「脂肪の塊」を思い出させられるストーリィで、同作を読んだことのある方なら興奮するような面白さを味わえること間違いなしでしょう。

少年水夫の話/カーネーションの若者/真珠/無敵の奴隷所有者たち/女の英雄/夢を見る子/アルクメーネ/魚/ペーターとローサ/悲しみの畑/心を慰める話

    


     

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