キラン・デサイ作品のページ


Kiran Desai 1971年インド生。母親はインドのジェイン・オースティンと言われる作家アニタ・デサイ。14歳以降イギリス、アメリカで教育を受ける。98年コロンビア大学創作科在学中に「グアヴァ園は大騒ぎ」にて作家デビュー。同作品にてイギリスのベティー・トラスク処女長篇賞を受賞。

 


 

●「グアヴァ園は大騒ぎ」● ★☆
 
原題:"Hullabaloo in the Guava Orchard"




1998年発表

1999年09月
新潮社刊
(2000円+税)

 

2000/01/22

舞台はインド。郵便局員サンパトは、仕事も嫌だし、家族との騒々しい生活にもうんざり。ついに奇妙な振る舞いをしてしまったサンパトは、郵便局をクビになり、バスで町から逃げ出します。その途中で見かけたグアヴァの大樹。その樹の上にのぼったサンパトは、初めて安らぎを覚えます。
ところが、樹上のサンパトを見た人々が、彼を聖者と称え始めたことから次第に人々が集まりだし、騒ぎは広がっていきます。
極め付けの世俗人である父親ミスター・チャウラは、サンパト目当ての人々を相手に樹の下で商売を始めます。一方、サンパト同様ちょっと変わり者の母親クルフィは、樹の下で風変わりな料理を作ることに夢中となり、妹ピンキーは奇妙な行動に走り出します。さらに猿の一群も集まりだし、最後は軍隊が出動するという騒ぎにまで。まさしく、グアヴァ園が大騒ぎとなるストーリィです。
なんて変テコな人間たちばかりなのか、と思うのですが、訳者によるとインドではそれ程奇妙なことではなく、実際に樹上に生活する隠者などがいるのだそうです。
本書でも、サンパトが樹の上から語る言葉に、なんとなく深い意味が隠されているように聞こえるのが愉快。

本書の面白みは、そんなインドの雰囲気と、樹の上と下で平穏な世界と世俗的な世界が対照的に繰り広げられること、自分の損得ばかり考えている人間の愚かしさをユーモラスに描いているところにあります。
たまには、こんな生活観の全く異なる小説を読むのも楽しいことです。

 



新潮クレスト・ブックス

  

to Top Page     to 海外作家 Index