ネルソン・デミル作品のページ


Nelson Demille  1943年米国ニューヨーク州クイーンズ生。ホフストラ大学在学中、歩兵中尉としてヴェトナム戦争従軍。帰国後いくつかの警察小説を書いた後、「誓約」にて力量を認められ、ベストセラー作家となる。


1.将軍の娘

2.スペンサーヴィル

 


     

1.

●「将軍の娘(上下)」● ★☆
 
原題:"THE GENERAL'S DAUGHTER"      訳:上田公子

 

 
1992年発表

1996年12月
文春文庫刊
(581・543円+税)

  

2002/07/29

基地司令官の娘で、エリート美人大尉として有名だったアン・キャンベルが、絞殺死体となって発見される。しかも、全裸、両手足を杭に縛り付けられているという異常な姿。
基地内の事件であったことから、別件調査で来合わせていた、陸軍犯罪捜査部(通称CID)の、ポール・ブレナー准尉が、事件の捜査を命じられます。
本作品は、そのブレナー准尉を主人公に、第一人称で語られる犯罪捜査ストーリィ。

一見レイプ事件のようですが、レイプされた痕跡はまるでない、といった異常な事件だけに、真相を追っていくストーリィは興味津々。
それに、陸軍という特殊世界、主人公の乱暴とも言える探索ぶり、FBIが捜査に乗り出す迄という時間制限が、面白さを増しています。
もうひとつの面白さは、捜査において、レイプ専門CID捜査官であるシンシア・サンヒル准尉が、ブレナーとコンビを組むところ。この2人、かつてブリュッセルで一時的な恋人関係となり、ブレナーがシンシアの婚約者に銃で追いまわされた、という経緯がある。冒頭、ブレナーに冷たかったシンシアの態度が、次第に変化していくところも、注目点です。
謎解きという部分では、こじつけがましいところもありますが、CID捜査官・男女コンビによる殺人事件解決ストーリィとしては及第点。主人公2人の大人っぽい恋愛要素が、本作品の魅力を引き立てています。

   

2.

●「スペンサーヴィル(上下)」● 
 
原題:"Spencerville"      訳:上田公子

 

 
1994年発表

2000年4月
文春文庫刊
(各667円+税)

  
2002/07/29

国家安全保障会議のスタッフをリストラ解雇された元スパイ、キース・ランドリーが主人公。
退職後のキースは、一路故郷スペンサーヴィルへ向かう。かつての恋人アニー・プレンティスに再会したい、というのもその動機のひとつ。ところが、そのアニーの結婚した相手は、町を牛耳る悪徳警察署長。アニーも夫婦関係に絶望かつ後悔しており、キースへの愛を忘れかねているとう設定。アニーを悪徳警察署長から救い出すため、キースは闘いを挑む、というストーリィ。

なんとなく昔の西部劇にありそうなストーリィです。ただ、アニーの結婚生活が20年にも及び、大学生の子供が2人もいるとなると、じゃあこれまでの20年間はいったい何だったのか、という疑問を感じざる得ません。離婚が日常茶飯事となっているアメリカでは、問題にもならないことなのでしょうか。
その分、アニーの夫クリフ・バクスターは、かなり悪く描かれています。これぞまさしく悪徳警官の典型例といった具合。アメリカの田舎町では、こうしたことも起こり得るのだと考える限りでは、この点、本作品は面白い。
一方、キースとクリフのアニーをめぐる闘いという部分、最後の結末の部分では、いまひとつ不満。まあ、壮絶な闘いを予想した私の方が、期待過剰だったのかもしれません。

  


   

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