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Sarah Crossan 1981年アイルランドの首都ダブリン市生。大学で哲学と文学を専攻し、ケンブリッジ大学で英語講師を務めた後、2011年「The Weight of Water」にて作家デビュー。15年発表「わたしの全てのわたしたち」にてカーネギー賞を受賞。 |
| 「ムーンライズ」 ★★☆ 原題:"Moonrise" 訳:三辺律子 |
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2026年05月
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最初は10年前、ジョーが7歳の時。兄エドからの電話をジョーが取ると、「警察に捕まった、おまえには本当のことを知っておいてほしい、おれはやってない」と一方的に告げられる。 しかし、エドは警官殺しで死刑判決を受け、NYから遠く離れたテキサス州の刑務所に収監された。 それから10年後、エドからの手紙が届く。そこには「死刑執行日が決まった、会いに来てほしい」と書かれていた。 母親は子ども二人を置き去りにしてとうに出奔、音信不通。姉アンジェラとの2人が工面できるのは一人分の交通費だけ。 17歳になったジョーは、たった一人で最後の数週間を兄と過ごすため、一人で刑務所のある町ウェイクリングへ向かう。 本作は、そこから数週間にわたるジョーの様子、その胸の内を描いていきます。 但し、一般的な小説スタイルではなく、短い言葉で進む“ヴァース・ノベル(詩形式の物語)にて語られる物語。 詩形式であるが故に、余計な説明や虚飾が一切なく、ジョーの思いがストレートにこちらの胸に突き刺さって来るようです。 ジョーの胸の内には様々な、複雑な思いが籠っています。父親のような存在だったことに感謝する思いもあれば、事件について何が真実なのかという疑念、所持金も大してない状況の苦しさ、そして過酷な日々を一人で背負う重さ、やりきれなさもあります。 救われる思いがするのは、そんなジョーの姿を見て、手を差し伸べてくれる人たちの存在です。 ヴァース・ノベルという形式がこれ以上にないくらい効果を発揮している作品、最初から最後まで胸がつまる思いがします。 そして本当に死刑執行はなされるのか、最後の最後までスリリングで目が背けられません。 是非、お薦め。 ※詩という形式の物語を読むのは初めてではなく、プーシキンには<物語詩>といった形式がありましたが、それらとヴァース・ノベルはかなり違い、感情がビシビシと伝わって来るところがその特徴と感じます。 |