マイケル・クライントン作品のページ


Michael Chrichton  1942年米国シカゴ生。ハーヴァード・メディカル・スクール在学中からミステリを書き始め、68年「緊急の場合は」にてアメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長篇賞を受賞。「ジュラシック・パーク」は映画化でも話題となった。2008年10月死去。

 


 

●「エアフレーム−機体−」● 原題: “AIRFRAME”  ★☆




1996年発表

1997年5月
早川書房刊
上下
(各1800円+税)

2000年9月
ハヤカワ文庫化
(上下)

 

2000/08/04

ロスアンゼルス空港に緊急着陸した大型ジェット旅客機。飛行中に多数の死傷者 を出したということだったが、関係者が着陸した機の内部を見ると、愕然とするくらい滅茶苦茶な状態。 一体、この機に何が起きたのか。
航空機メーカーである
ノートン・エアクラフト社の事故原因究明チームの副部長、ケイシー・シングルトンが事故原因の解明にあたります。 ケイシーは、離婚して独身、娘一人。仕事振りは真面目で誠実という女性。しかし、ケイシーは原因解明に追われ ながら、中国との大型商談、マスコミの取材攻勢、会社内部の権力争いに翻弄される、というストーリィ。

アーサー・ヘイリー的業界小説を、ライト・サスペンス風に仕上げた作品、と言ったら良いでしょうか。どうしても、ヘイリー作品と比較してしまうのは仕方ないところ。本書によって、大型ジェット旅客機の仕組みを知ることが出来る点、大きな楽しみです。その一方、ケイシーにちょっと物足りなさを感じます。アーサー・ヘイリー作品では、主人公たちはもっと使命感に溢れて突き進んでいました。それに対し、ケイシーの場合は、仕事だからという感じを受けます。したがって、迫力不足。また、ケイシーの足を引っ張ろうとする同僚、TVニュースのプロデューサーは、あまりに幼稚な人物設定と思われます。
最終場面、ケイシーの窮地、逆転を果たす為のケイシーの作戦、行動は、なかなか読ませてくれます。しかし、それにしては、解明された事故原因は、余りにたわいないもの。
サスペンス小説ではあっても、アーサー・ヘイリーの企業小説の緊迫感に及ばないな、と思った次第。
※ケイシーの古株秘書
ノーマが、興味惹かれる人物。

 


 

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