レオノーラ・キャリントン作品のページ


Leonora Carrington 
1917年英国ランカシャー生。裕福な家に生まれ17歳で社交界デビューするが飽き足らず、父親の反対を押し切ってロンドンの美術学校に進む。36年ロンドンで開かれた国際シュルレリアスト展でマックス・エルンストの作品に打たれ、エルンストを追ってパリ、南仏に移り、シュルレアリスト・グループと交流。2度の結婚を経て42年以降はメキシコ在住。絵画、版画、タピストリー、彫刻の分野で旺盛な創作活動を続ける。

 


 

●「耳ラッパ−幻の聖杯物語−」● 
 原題:"The Hearing Trumpet"     訳:野中雅代




1974年発表

2003年07月
工作舎刊

(2000円+税)

 


2009/01/15

 


amazon.co.jp

破壊的なまでにシュールな、老女マリアン・レザビー、92歳を主人公とした奇想天外な長篇冒険譚。
読み終えた直後の感想は、率直に言って、よう判らん、の一言。

始まりは、息子夫婦+孫と同居するマリアンが、「あんな老人にはあなたや私のような感情はないの」とまで好き放題に言われ邪魔にされ、施設に入所させられることになったところから。
しかし老いたりとはいえマリアン、耳が遠いことを除けば極めて健康。そこで親友カルメラがプレゼントしてくれたのが、バッファローの角の形をした“耳ラッパ”。マリアンがこれをあてがうと、内緒話さえ全て聞こえてしまうという道具。
表題にもなっているその耳ラッパ、その後あまり活躍する様子がないのには???。

主ストーリィは彼女が施設に入った後のこと。
奇妙奇天烈な入居者たち。その範囲に留まるストーリィかと思えば、聖人とされた尼僧院長の破廉恥な生涯が明らかにされるかと思えば、方舟のノアは早々に溺死したとされ、さらに聖杯騒ぎ、地獄にまで行き着くといった風で、想像力の飛躍するところ留まり無し、という按配。いったい何なんだ、このストーリィは!?と、思わずぼやいてしまう程。
ただそこで注目するのは、キリスト教信仰世界が足蹴にされていること。「悪徳の栄え」を書いたマルキ・ド・サドは、背徳をモチーフにキリスト教信仰を叩きに叩いたところがありますが、それと対照的に本書の場合は、想像力を繰り広げてキリスト教信仰を冷笑に付してしまったという観あり。
その上で、だからどうした?と言われると、う〜ん・・・・答えられないんですけど。

素敵なプレゼント/光の家/調理場での奇妙な光景/サンタ・バルバラ修道院尼僧院長の生涯/モード殺人事件/反乱計画/闇夜の集会/天変地異・世界の子宮にて/聖杯の奪回

         


 

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