ピーター・ブラウン作品のページ


Peter Brown 米国の作家兼イラストレーター。ニュージャージー州で自然と親しみながら育つ。


1.野生のロボット 

2.帰れ 野生のロボット 

 


                          

1.
「野生のロボット」 ★★     
 
原題:"Thi Wild Robot"      訳:前沢明枝


野生のロボット

2016年発表

2018年11月
福音館書店

(1900円+税)



2025/02/15



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映画「野生の島のロズを観た後、原作にも興味が生じて読んだ次第です。

ストーリーは、映画の方が少し簡略化されていますが、大筋で違うところは余りありません。

多数のアシストロボットを載せた貨物船が遭難、無人島にロボットを格納した5箱が漂着しますが、無事だったのは1台のみ。
ラッコが触れてそのスイッチが入り、
ROZZUM(ロッザム)7134型が起動、自分のことは「ロズ」と呼んでください、と一声。
しかし、誰も指示を与えてくれず、ロズはそのまま島を彷徨し始め、島に住む動物たちは怪物が来た、と大騒ぎ。
それでも島の植物に擬態、なんでもかんでもと観察に務め、やがて動物たちと交流するようになります。
そしてただ一つ無事だったガンの卵から雛が孵り、ロズはガンの子どもである
キラリの母親として、子育てに奮闘していく、というストーリー。

映画では、“アシストロボット”→“野生のロボット”という変化を単純に受け入れてやり過ごしてしまったのですが、原作では
“野生のロボット”ということに大きな意味があるのだと気付かされ、かつ感じさせられました。
島に住む動物たちから当初“怪物”扱いされたロズが、“野生のロボット”となる意味は、キラリを懸命に育て、他の動物たちの手助けもする姿から、自分たちの仲間として信頼され、受け容れられたということなのです。
単に人間社会から隔絶したため自立意志で行動している、というだけのことではなく、野生の生き物たちの一員である、という意味で「野生のロボット」なのです。
そして、キラリへの愛情、感情まで生まれていく、もうこれはロボットという存在を超えた、と言うべきなのでしょう。

さて、最後に島を出て人間社会に戻っていくロズがどうなるか、続編が楽しみです。

      

2.
「帰れ 野生のロボット」 ★★     
 
原題:"Thi Wild Robot Escapes"      訳:前沢明枝


帰れ野生のロボット

2018年発表

2021年05月
福音館書店

(2000円+税)



2025/02/
25



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野生のロボット続編。
前作の最後で人間社会に戻った
ロズ、その後ロズはどうなったのか、そしてロズは再び故郷であり、愛する子のキラリらが待つ無人島へ帰れるのか、を描いたストーリー。

修理された後に安価な中古ロボットとして売りに出されたロズを購入したのは、農機具事故で片脚が不自由になった
シャリーフ
その酪農牧場でロズは、自分の本当の姿を隠し、普通のロボットの姿を装い働き始めます。それが前半部分。

そして後半、ロズこそ“無人島の野生ロボット”だと知った二人の子ども=
ジャド、ジャヤの手助けを受けて、ようやく再会したキラリと共にロズは農場を逃げ出し、故郷である無人島に向かって旅立ちます。
しかし、その前には何度も、レコロボットら妨害するものたちが立ち塞がります。
その度に二人を助けてくれるのは、ロボットとガンの子の話を伝え聞いて応援しようとする動物たち。
必死の逃走を続けるロズたち、果たして無人島にたどりつけるのか? その結果は、あぁ・・・・。

前作は無人島が舞台であったのに対し、本作の主な舞台は人間社会等々。
前作の最初、ロズは怪物だと言われて島の動物たちから恐れられますが、本作でロズは人間から、本来のロボットではなく異常なロボットとして恐れられることになります。
要は、相手との相互理解が成り立つかどうか、という問題。
前作では動物語を学びコミュニケーションが成り立ちましたが、人間社会において多くの人間たちとそれが成り立つのか。
本作の面白さは、実際に読んでこそ味わえるもの。どうぞお楽しみに。

なお、本続編の映画化も既に決定されているそうです。楽しみ。
また、原作には未邦訳の第3弾「ワイルド・ロボット・プルジェクツ」もあるそうです。是非翻訳刊行して欲しい処です。

     


         

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