ジェームス・マシュー・バリ作品のページ


Sir James Matthew Barrie  1860-1937 英国の劇作家、「ピーター・パン」の作者。スコットランドの貧しい織物職工の家に生まれる。1882年エディンバラ大学にてマスター・オブ・アーツの学位を取得、1909年同大学にて法学博士の名誉学位を受け、13年準男爵に叙せられる。19年セント・アンドリュース大学学長、22年勲功章を授賞。

 


   

●「十二磅(ポンド)の目つき 他ニ篇」●  ★★
 原題:“Twelve Pound Look

 

1910年発表

 
1938年7月
岩波文庫刊

1995年10月
第3刷
(398円+税)

 

2001/06/03

作者のバリについては、以前に「ピーター・パン」を読んだだけで、それ以上には何も知りませんでしたが、書店店頭で本書をみて迷わず購入しました。英文学の戯曲にはまず外れが無かった、というのがこれまでの私の経験です。

バリの同時代というと、バーナード・ショーを思い出します。
本書に収録された3篇の中では、紛れも無く
十二磅の目つき」が傑作ですが、皮肉を含んだ風刺的な作品という点でショーと似ています。しかし、ショーの皮肉には強烈なものがありますが、バリの場合は柔らかくて受け入れ易い。
夫にとって妻の価値とはどれ程なのか、そして妻はそれで満足するのか、というのが
十二磅の目つきのテーマ。
ナイトの称号を得ることになったハリ・シムズが呼んだタイピストは、偶然にも14年前に出奔して離婚した元妻ケイト。それから2人の回顧が始まります。
内容は省略するとして、現在のレディ・シムズによる幕切れの一言は、短いけれど印象的です。男性なら誰しも、思わずギクッ、とさせられることでしょう。
現在の社会情勢からすると、先見の明があったと言えるし、笑い事ではないですよ、全く。

「遺言書」は夫が妻に残す遺言書をめぐる劇で、新婚、中年、老後という3幕構成。人生の皮肉を描いた作品です。
「忘れえぬ声」は、戦死した息子の亡霊と父親が語り合う劇。時代背景を映した作品のようです。

十二磅の目つき/遺言書/忘れえぬ声

 


   

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