アンデルセン作品のページ


Hans Christian Andersen 1805〜75年。デンマークの童話作家。その童話は80ヵ国語以上の言語に翻訳され、世界中で愛されている。


1.アンデルセン童話集1

2.アンデルセン童話集2

3.アンデルセン童話集3

 ※岩波書店版「アンデルセン童話集」は全7巻(初版は昭和13年刊)

 


   

1.

●「アンデルセン童話集1」●  ★★★     訳:大畑末吉




1981年6月
岩波書店刊
(1800円+税)

 


1976/07/20

「火打箱」「小クラウスと大クラス」:2作ともアンデルセン童話としては珍しい、残酷性が感じられます。しかし、前者は市民階層発展の表現であると説明されれば成る程と思います。また、後者は残酷性云々よりむしろその土臭さに特色があります。それだけに、アンデルセン童話にはなかなかみられない、ユーモアが感じられます。

「親指姫」:高橋健二氏はこの作品を酷評しているが、それ程とは思えません。確かに世話になった人々を忘れて自分の幸福のみを追っている観がありますが、これはごく普通のことと言えるのではないでしょうか。問題は、アンデルセンがモグラを醜いものと決め付けてしまっている点にあるのではないでしょうか。外見上の美しさにとらわれる、作者の若さ故のことでしょうか。

「人魚姫」:アンデルセン童話の中でも最も完成した、一つの人生話とも言うべき作品。愛情の崇高さ、せつなさ、愛情故の苦しみが謳われています。しかし、人魚姫が永遠の魂を得るまでに3百年も空気の精として過ごさなければならないというのは、あまりに過酷。魂の道からはずれた者に対するアンデルセンの厳格さが窺われます。

「錫の兵隊」:大好きな作品です。錫の兵隊は身体を動かすことのできないただの人形ですが、作者のこの人形に何ひとつ動きをさせることなしに動きを与えています。「しっかり立っていた」、「まっすぐ前を見つめていました」等々。そんな錫の兵隊の心意気が、読み手に伝わってくる気がします。錫の兵隊が好きになる踊り子の人形にしても同じこと。作者の終始変わらぬ優しさが感じられます。

「野の白鳥」:とても美しい作品。ストーリィ自体の美しさに留まらず、その旋律を奏でるような表現の美しさが印象的。

火打箱/小クラウスと大クラウス/エンドウ豆の上に寝たお姫様/小さいイーダの花/親指姫/いたずらっ子/旅の道づれ/人魚姫/皇帝の新しい着物/幸福の長靴/ヒナギク/しっかり者の錫の兵隊/野の白鳥/パラダイスの園/空飛ぶトランク/コウノトリ

   

2.

●「アンデルセン童話集2」●  ★★★     訳:大畑末吉




1981年7月
岩波書店刊
(1800円+税)

 


1976/07/20

「ナイチンゲール」:美しさに溢れた作品。ナイチンゲールの歌声より、その心の方がはるかに美しいと感じます。

「みにくいアヒルの子」:まさに作者自身がモデルと言って良い作品。そこまで自分の容貌にコンプレックスを抱いていたという逸話は、印象的です。

「モミの木」:身体の芯へと斧のくい入る痛さが、我が身のことのように感じられます。若い時の自由と喜び、終わりの無意味さを、モミの木を通じて静かに語っている気がします。

「雪の女王」:アンデルセン童話を代表する作品のひとつ。一度読んだら忘れられないストーリィ。

「マッチ売りの少女」:貧困の苦しさを強く訴えた作品。少女が夢みる、家の中の暖かい食事風景、それは外で寒さに震える少女の姿と対照的です。死んだおばあさんに縋る、そこには現実の辛い生活よりなお死の方が楽である、死こそは唯一の救いであると語り、世間一般の理想論を打ち砕く強い主張を感じるのです。

青銅のイノシシ/友情のちかい/ホメロスの墓のバラ一りん/眠りの精のオーレ・ルゲイエ/バラの花の精/豚飼い王子/ソバ/天使/ナイチンゲール/仲よし/みにくいアヒルの子/モミの木/雪の女王/ニワトコおばさん/かがり針/鐘/おばあさん/妖精の丘/赤いくつ/高とび選手/羊飼いの娘とエントツ掃除人/デンマーク人ホルガー/マッチ売りの少女/城の土手から見た風景画/養老院の窓から/古い街灯

 

3.

●「アンデルセン童話集3」●  ★★★     訳:大畑末吉

 


1981年8月
岩波書店刊
(1800円+税)

1976/07/20

「年の話」:春の訪れの表現は、何にも増して素晴らしい。春の情景と喜びに、深く胸を打たれます。

「あの女はろくでなし」:アンデルセンの母親がモデル。彼女は息子のために苦労し、最後はアルコール中毒に冒されます。アンデルセン自身は見舞いに訪れることも少なかったのですが、亡き母親への思いが、幼い子の口を借りて語られている作品です。

おとなりさん/ツック坊や/影法師/古い家/水のしずく/幸福な一家/ある母親の物語/カラーの話/アマの花/不死鳥/ある物語/もの言わぬ本/「ちがいがあります」/古い墓石/世界一の美しいバラの花/年の話/最後の日に/まったくそのとおり!/白鳥の巣/上きげん/心からの悲しみ/みんなその正しい場所に!/食料品屋の小人の妖精/千年後には/柳の木の下で/さやからとび出た五つのエンドウ豆/天から落ちてきた一枚の葉/「あの女はろくでなし」/最後の真珠/ふたりのむすめ/海のはてにすむとも/子豚の貯金箱/イブと小さいクリスティーネ

      


   

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