タイ北部・アカ族2村落の13年の歩み
−現代タイ社会での生存戦略とアイデンティティーに関する考察−
東京外国語大学大学院博士前期課程(地域文化研究) 東出 紀子
13年前に分裂した2村での分裂、移動の語りがどう伝えられ、解釈されているか。現状の相違を彼等の中でどう解釈し、展望しているのかというところから遡り、13年前に分裂した2村の13年間をたどる。タイのアカ族が、どのような生存戦略をどういう条件下で選択してきているのか、彼らにとってのアイデンティティはどのような場で選択され、認識されるのか考察する。また少数民族の「村」という単位が必ずしも固定されたものではなく、定住することを目標としない社会を対象にアイデンティティの問題をどのように取り組むことができるのかの模索。これまでの研究者たちによるアカザン=アカの生活法による説明ではない、アカ族のアイデンティティの持ち方を彼らの生存戦略の中から考察する。
A(アペ・ブホ)村の13年の歩み
- 村長のライフヒストリー(タイの行政村長、ガイドと観光業)
生産活動・・主な農作物、生活の糧、観光をめぐるもめごと
信仰・・キリスト教への改宗
タイ人との出会い、タイ国籍取得へ、行政との関わり、森林局、王室プロジェクト
学校、教育に関しての知識、意識、NGOとのかかわりかた
B(バンクラウン・バカン)村の13年のあゆみ後
- ロミアカとウロアカの共存
村としての機能、共同作業
生業・・土地の所有をめぐる経緯
信仰・・精霊信仰→火事→マリア様への集団改宗
タイ国籍取得、学校、電気の有無に関して
フィールドデータから
- 村の分裂のきっかけとなるさまざまな要素
キリスト教、土地所有、国籍取得、森林局、学校、リーダーシップ、親族関係
分裂、移住の語り・・・現状と語り2つの村から
新天地の確保・・・「伝統的」新天地選びから現代社会での選択への変化
村の構成要素(人、物質、土地、信仰)
アカ族の親族関係・・・種の交換、裁縫など物質文化に見るネットワークと居住地
考察
- 中国、ビルマからの移動と現代タイ社会下での移動、定住
生産活動の変化(物質的に変わらなければならない)と選択肢、行政の対応の変化
「戻らない」ことと「アカ」であること
精霊信仰、キリスト教のアカ化
2000年祭りでの聞き取りからアカにとっての「村落」をかんがえる。
リーダーシップの転換 zoe ma ズィマから bu se ブセ への転換と村内の混乱
※図版は省略
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