2021年 仙人の会5月例会(オンライン開催)


日時:5月16日(日) 14:00~18:00

ZoomミーティングURL:幹事の山岸哲也までお問い合わせください

発表者:李 生智(國學院大学大学院)

発表題目
 中国青海省の河湟地方における漢民族の葬礼とその担い手——湟中県李家山鎮新添村の事例から  

発表要旨
 1985年から2021年にかけての「殯喪改革」を経て、青海省の漢民族の葬送習俗には二つの大きな変化がある。省都の西寧市など都市部では、遺体処理の方法が土葬から火葬へと変化していった。一方、農村部では今も土葬が一般的である。また、農村部の漢民族の中では1949以降、「封建迷信」と否定されていた葬送習俗を全面的に復活させている点が注目される。
 発表者は2016年から2021年現在まで、西寧市の周辺の農村部で合計12例の葬礼の実地調査を行ってきた。そこから、漢民族の葬礼の実態とその担い手について分析すると、次の点が指摘できる。
①青海省の農村部における漢民族の葬礼は、祝寿、臨終期、祭奠(弔問)、埋葬、祭祀の5段階で構成されている。葬礼は、死亡後に行う儀礼という狭義の儀式だけではなく、生前の棺桶などの葬具の用意から死亡後20年目の祭祀までの儀礼を含むといえる。
② 葬礼を行う構成員としては、喪家に集まった人々と死者との関係性から家族、党家(宗族)、親戚、荘員(村人)などの4つのグループに分けることができる。葬礼ではこの4つのグループがそれぞれの役割を果たして、協同で儀礼を行う。この4つのグループは喪家との親疎にもとづく関係から分類されている。こうした関係性は喪家との贈答品や喪服などに反映されていて、葬礼の場では可視化されている。
③ 葬礼には、陰陽先生、礼儀先生、アカと呼ばれるチベット仏教の僧侶などの宗教的職能者が関与する。宗教的職能者の関与は地域差がある。
④ 葬礼は死者の帰属を確定する儀礼を含み、死者の子どもたちの「孝」を確定する場である。具体的には、党家が死者の状況によって葬礼の規模を決め、死者の名を族譜に記し、これが祖墳への埋葬資格となる。死者が嫁いだ者ならば、その実家が骨主となり、遺体などを検分する。
 本発表では、最も旧来のやり方を伝えている(典型的な)例と考えられる、湟中県李家山鎮新添村の葬礼について、担い手に注目して分析を行なうこととする。



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