日時:12月8日(日) 14:00~18:00
場所:法政大学92年館(大学院棟) 2階201号室
JR中央線・地下鉄南北線飯田橋あるいは市ヶ谷駅または
JR中央線・地下鉄南北線/有楽町線/東西線飯田橋駅下車、徒歩約10分
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発表者:飯島 奨(大東文化大学)
発表題目
「西番調」―雲南省蘭坪県龍潭村普米族の掛け合い歌―
発表要旨
中国雲南省北部の永寧地域、及び蘭坪地域に居住する少数民族の普米族(※以下「プミ族」)は、人口約三万人で、放牧や農業を主に生業とする集団である。彼らは風俗・信仰・言語などによりいくつかのグループにわけることができ、主に麗江より北部の永寧地域に居住するグループ(※以下「永寧プミ族」)と麗江の南西部の蘭坪地域に居住するグループ(※以下「蘭坪プミ族」)に分けることができる。また、その他にも四川省木里にも居住するグループがあるが、彼らはチベット族化が進み、言語や生活形態はチベット族のそれに近いという。
ところで、蘭坪プミ族は使用する言語によってさらに二つに分けることができ、中部から北部の羅古箐、河西地域の、プミ語を話すグループと、蘭坪の県都付近の金頂から中部の龍潭一帯に居住する白語(※以下「ペー語」)を話すグループである。ちなみに永寧プミ族はプミ語を用い、また隣接するモソ人の言語も話すことができる場合が多い。
「西番調」とは龍潭プミ族の掛け合い歌で、ペー語を用いてプミ族のメロディーとリズムで歌われる。筆者が依頼して歌ってもらい記録したものは結婚式で歌われる西番調である。2015年3月に筆者が初めて龍潭村を訪ねた際に依頼して歌ってもらったものを筆者が資料化した。プミ族は自民族の言語を基本的には文字化する術をもたないため、国際音声記号(※以下「IPA」)によって表記することにし、それに漢語の大意と、その大意の日本語訳を付けることとした。
この歌の特徴は、結婚式で歌われるが、現在では行われておらず、歌える人は高齢の人たちに限られている。また様式の特徴として、歌を掛け合う双方ともに、男女問わず嫁の立場に立って一人称で歌う。歌詞の内容は、嫁ぎ先での辛さや、嫁自身の孤独感を歌いあげるものが多く、これを結婚式で歌ってよいのか、と思わず首をかしげたくなるものが多い。歌い手たちへの聞き書きでは、彼らは掛け合い歌の一首一首を「可怜調」とか「苦情調」とか名付けている。
本発表ではIPAを用いた歌詞資料を提示することを第一の目的としている。歌の考察はまた場を改めたいと思う。
※当日は資料・お茶代として200円いただきます。
(例会終了後には、会場近くで懇親会を開催いたします。)