2019年 仙人の会11月例会


日時:11月30日(土) 14:00~18:00

場所:法政大学92年館(大学院棟) 5階501号室
 JR中央線・地下鉄南北線飯田橋あるいは市ヶ谷駅または  JR中央線・地下鉄南北線/有楽町線/東西線飯田橋駅下車、徒歩約10分


Googleマップ用QRコード

発表者:江 軍哲(法政大学大学院 博士前期課程)

発表題目
 「未識別民族」のアイデンティティはいかに構築されてきたのか ―貴州省織金(しょくきん)県の穿(チュアン)青(チン) 人(レン)を例に  

発表要旨
中国では56民族以外のエスニックグループが存在している。彼らは「未識別民族」と呼ばれ、何らかの理由で民族識別調査組に独自の「民族」として認定されなかったエスニックグループである。彼らは、独特なアイデンティティを持っているため、国から一個の少数民族として認められないにも関わらず、自らは少数民族であると主張している。本研究の研究対象となる穿青人もまさに代表的な未識別民族の1つである。
青色の服装を着ているため、周囲の民族からは「穿青人」と呼ばれたが、彼らのルーツをめぐってはさまざまな見解がある。費孝通(1955)が指摘したような漢族の末裔であるのか、あるいは、「重新識別報告」(1986)の結果のような、彼らの先祖は貴州省の原住民であるのか。また、「穿青人」としてのアイデンティティはいかに構築されてきたのか。
従来の研究では、「服装」が彼らのアイデンティティ構築の核であると指摘されているが、それは現在も通用できるのか。本研究は、それについて議論して行きたい。
実際に現地調査してみると、現在穿青人の民族服装はほぼ消滅している状態である。わずかな地域にしか残っていない服装が本当に穿青人のアイデンティティ構築の核と言ってよいのか。あるいは、ある時点から穿青人の生活に密接している「五顕神(ウシェンシェン)」という信仰が、穿青人のアイデンティティ構築に重要な役割を担ったではないのかという仮説を立てた。
その仮説を検証するために、文献調査だけでなく、2018年9月及び2019年1月に、貴州省織金県を中心に、周囲の以那(いな)鎮、桂果(けいか)鎮を含め、2回のフィールドワークを実施した。
今回の発表では、先行研究を踏まえ、2回の調査で得られたものを整理し、穿青人アイデンティティ構築の過程をみなさんと共有できればと思う。


※当日は資料・お茶代として200円いただきます。
(例会終了後には、会場近くで懇親会を開催いたします。)