2018年 仙人の会12月例会


日時:12月15日(土)  14:00~

場所:東京学芸大学 二十周年記念飯島会館1階第3会議室
 JR 武蔵小金井駅・JR国分寺駅・西武新宿線小平駅よりバス
 東京学芸大学の正門を入ってすぐ左にある2階建ての建物です。茂みの奥にあります。正門わきと言って良い場所です。目印としては正門右側の守衛所から見て真向かいです。
 現地へのアクセスについては、こちらをご覧ください。
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発表者:吉村竜(首都大学東京大学院)

発表題目
 ブラジル日系人の自他意識の変化と営農戦略から見る「日系コロニア」の諸相  

発表要旨
 本発表は、第二次世界大戦後にブラジル南東部、サンパウロ州ピラール・ド・スール市(ピラール)に移住した日系人の生活実践について報告するものである。
 ピラールの日系人は移住当初(1945年)、「ピラール文化体育協会」(ピラール文協)を結成して日系人の社会的統合を果たすと同時に日系人のブラジル社会への帰属を表明した。その後、文協会員と婚姻関係にある非日系人や近隣都市からの当地への日系人転居者が文協活動に関わるようになった結果、会員は彼らとのあいだに差異や違和感を持つようになった。従来のブラジル日系人研究では、ブラジルの「人種」概念に対抗して日系人のアイデンティティが形成されたと言われるが、本発表では、文協会員が「人種」とは異なる基準で非会員(または非日系人)との線引きをしていることを指摘する。
 また、ピラールの主要産業である農業(果物生産)では、日系人は移住当初から農協に属して、経済面での農家間の調和をはかったが、1980年代のネオリベラリズム的自由市場化政策を受けて農協が経営破綻(1994年)した結果、個別に利潤を求めるようになった。対して、ピラールの日系人のあいだでは「競争よりも協力を」という声が高まり、彼らは個別的に営農しつつも、果物生産者アソシエーション「パウリスタ柿生産者協会」を結成して当地の果物生産量を倍増させるなど、市経済を支えるまでになった。本発表では、「自由」(liberal)の普遍化を謳うネオリベラリズムに即しつつも抵抗する、農家としての日系人の実践にも着目する。
 以上を踏まえて、日系人が相互に社会的・経済的に調整する――文協と農協双方を包含する――ことを意味する「日系コロニア」の全体像を説明し、その今日的意味を検討することが本発表の目的である。


※当日は資料・お茶代として200円いただきます。
(例会終了後には、会場近くで忘年会を兼ねた懇親会を予定しております))