日時:11月12日(日) 14:00〜18:00
場所:法政大学大学院棟(旧92年館)4階401号室
JR中央線・地下鉄南北線飯田橋あるいは市ヶ谷駅または
JR中央線・地下鉄南北線/有楽町線/東西線飯田橋駅下車、徒歩約10分
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発表者:寺尾 萌氏(首都大学東京大学院博士後期課程)
発表題目
モンゴルの「千語の蓋」: 方便と嘘をめぐる若干の考察(仮)
発表要旨
本発表の目的は、モンゴルの地方部で暮らす、ある人々の言語世界について、方便と嘘の運用によって社会関係を遂行する実践から人類学的に考察することである。
2014
年の晩秋に、調査地としてモンゴル西部のある郡での長期フィールドワークを開始した発表者に対して、受け入れてくれた家庭の女主人とその友人は「何か聞かれたらまず『知らない』と答えなさいね。『知らない』ということばは『千語の蓋』だから」と助言した。実際に彼らの生活をみていると、たしかに「知らない」ということばは、一定の効力をもって人々の社会生活を規定しているようだった。他の世帯の成員との間で資源をやりとりする際に、自己の資源の減少を防ぐため[cf.
堀田2012
]、あるいは自らの行動を知られないために、そのことばが用いられる。そして、それを聞いた者は、それが単なる方便であると知りながら、たいていそれを暴くことはせずに引き下がる。
この「千語の蓋」をはじめとして、彼らは社会生活の遂行において、方便や嘘を作法として多用する。それはいわゆる「社交辞令」に近いが、それと対照的なのは、彼らにとってその方便が一定の効力をもっていて、その場の事実を陳述しているようにみえる点である。彼らにとって、「千語の蓋」の上にことばによって構成された世界は、社会的事実として現れているのである。
本発表では、この方便と嘘をめぐって、発表者が調査中に遭遇したいくつかの出来事を事例として、それらが、嘘か真かは問われないまま現実を構成していくモンゴルの言語世界をめぐる考察をおこなう。
※当日は資料・お茶代として200円いただきます。
(例会終了後には、会場近くで懇親会を開催いたします。)