2015年 仙人の会6月例会


日時:6月27日(土)  14:00〜

場所:亜細亜大学総合研究棟2階第8会議室
 現地へのアクセスについては、こちらをご覧ください。
   交通アクセス(Copyright (c) Asia University)
※会場がこれまでと異なっていますので、ご注意ください。

発表者:胡 艶紅氏(筑波大学大学院人文科学研究科博士課程)

発表題目
 太湖における漁民信仰の歴史的変容と持続―大型漁船漁民の事例を中心に―

要旨
 1949年の中国共産党政権成立以降、様々な政治運動によって中国社会のあらゆる側面に深刻な影響が現れた。特に信仰の面において、共産党政権は新政権を脅かす可能性がある民間信仰の組織に対して、様々な取り締まり運動や弾圧を行った。その結果、一時的に信仰活動が途絶したように見えたが、改革開放以降、信仰に関する政策が緩和されると、中国各地で信仰活動が「復興」してきた。しかし、これまで、こうした「復興」のありかたについての実証的研究は不十分であった。
 また、日本における中国社会変容に関わる人類学的研究において、中国文化の変容と持続、中国文化の「連続性」について議論されている。その中、宗教や信仰の側面から中国文化の変容と持続を論じる場合に、国家と宗教や信仰との様々な関係が提示されている。本発表ではこうした問題を受け、集団化や「陸上定居」などの「漁業社会主義改造」の政策により大きな影響を受けた太湖漁民を対象とし、彼らの信仰の変容と持続の両方を明らかにすることを目的とする。
 太湖では、漁船の規模に応じて、大型漁船漁民と小型漁船漁民の2つに大きく分けられる。大型漁船漁民と小型漁船漁民はただ単に漁船の大きさが異なるだけでなく、生業形態、家族形態、居住の仕方、さらにはその信仰にも違いが見られる。小型漁船漁民にはカトリックを信仰する者が多いが、大型漁船漁民は仏教・道教の神々や太湖周辺の地方神を信仰している。本発表では、大型漁船漁民の事例を中心に議論を展開していく。
 共産党政権成立以前、大型漁船漁民の信仰の在り方は漁撈集団、生業形態、家族形態の基盤の上で成り立っていた。「漁業社会主義改造」によって、以前の漁撈集団、生業形態、家族形態が崩壊し、漁民信仰もそれと共に変容せざるを得なかった。では、船上生活から陸上生活に変化した漁民の信仰はいかに変容し、持続しているのか。本発表では、各「家庭」レベルで行われる「七月半」祭礼と集団で行われる「焼香」活動に焦点を当てて考察を行いたい。

※当日は資料・お茶代として200円いただきます。
(例会終了後には、会場近くで懇親会を予定しております。)