日時:12月1日(日) 14:00〜18:00
場所:法政大学市ヶ谷キャンパス ボアソナードタワー11階1103号室
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※いつもの例会会場とは異なりますので、ご注意ください。
発表者:鈴木 洋平氏(東京大学大学院 総合文化研究科 超域文化科学専攻 博士課程)
発表題目
継承を「納得」する―民俗学からみる墓の建立と維持
要旨
本発表は、人々が共有する価値が常に変化し続ける場としての墓において、どのように変化を受け入れるのか、その「納得」の過程についての検討を目的とする。
現在の墓は外在化したものとしての墓の外見や葬法など、しばしば大きな変化を生じている。にもかかわらず、時に墓の管理を行う人々自身から「墓に大きな変化はない」「墓は墓だから」などといったような、内実の価値が変化していないとの主張がなされることがある。特に、外見的には大きな変化を伴ってきた台湾のような事例にあっては、「墓はそれほど変わっていない」という、墓を「祀る側」の人々の主張を説明できない事態に直面してしまう。このような事態を説明するためには、各種の新たな事態に対する人々の対応が「維持」であることを、変化を含めて「納得」される論理の検討が必要となる。本発表では、この点を中心的な問題意識として墓という対象へのアプローチを試みる。
今まで発表者が日本や台湾をフィールドとして議論を進めてきたのは、墓などの対象を中心に、人々の内的な論理がどのように変化するか、またその変化が受けとめられる過程について、民俗学の視点を基礎として記述することにあった。特に注意してきたのは、石塔などのものとして現れる部分や、歴史的・技術的な変化を受け入れるに際して、人々が過去との関わりの中で内的な論理を調整していく、感覚の変化である。ものがどのように扱われ受け入れられるか、という点に注意することで、人々がものを捉える論理の変化、あるいは論理を維持するための思考のあり方に、興味の中心を据えてきた。人々が自分たちの関係性をどのように認識しており、その安定をどのように維持しようとするか、という問題が墓において見えてくる。
自分たちに関わる過去の死者との関係性を維持しようとする行為は、「祀られる側」である死者との共有されない時間的差異による認識のズレを生じざるを得ない。このズレが累積する中で、ある時は「祀る側」である墓に集まる人々が新たな選択を行う中で「伝統」として維持され、ある時は過去の選択に影響され、さらなる選択の必要を生む。さらには累積された違和感によって「よくわからない習慣」として廃絶に至ることもある。今回は台湾や日本の墓に関わる事例を対象に、外的な変化の中で、人々が内的な論理をいかに整え「納得」するのか、ということを検討していきたい。
※当日は資料・お茶代として200円いただきます。
(例会終了後には、会場近くで懇親会を予定しております。)