2013年 仙人の会5月例会


日時:5月19日(日)  14:00〜17:00

場所:法政大学大学院棟(旧92年館)3階301号室
 JR中央線・地下鉄南北線飯田橋あるいは市ヶ谷駅または  JR中央線・地下鉄南北線/有楽町線/東西線飯田橋駅下車、徒歩約10分
 現地へのアクセスについては、こちらをご覧ください。
   交通アクセス(市ケ谷)(Copyright (c) Hosei University)

発表者:サランゴワ氏(慶應義塾大学准訪問研究員、千葉大学特別研究員、株式会社カイクリエイツ研究員)

発表題目
 ブォ(シャマン)の守護霊の憑依と民族文化の伝承ー内モンゴル・ホルチン地方の事例を中心に

要旨
 内モンゴルの東部に位置するホルチン地方は、内モンゴルの中で、シャマンが生き残ってきた数少ない地域の1つである。1950年代から1970 年代までの宗教政策によって、骨の治療に特化したシャマン以外のシャマンは、公に治療や祭祀を行うことがほとんどできなくなっていた。さらに、世襲型シャマンの家でも、先祖のシャマンについての話すらしなくなっていた事例も見られる。こうした状況のなか、約 30年間の間、新シャマンの誕生が稀となり、シャマニズムの文化の継承において、断層が生じた。
 1980年代以降、宗教政策の緩和によって、シャマニズムが再活性化し始め、2000 年以降、特に近年はその勢いが増している。シャマニズムの活性化を示す端的な特徴はシャマンの数の増加とシャマンのクライアントの増加である。ホルチン地方でシャマンと言えば、現地の人々がすぐ思いつくのは、病気治療はもとより、シャマンの守護霊の憑依によるトランス状態である。成巫過程において、弟子シャマンは、師匠の下で、守護霊に生前、生後の経歴を明かしてもらう、すなわち、その口を開かせるため、守護霊を招き呼びトランスに入る。また、一人前のシャマンはクライアントの依頼に応じて治療、占いなどのためトランスに入る。「巫病者」の急増に伴い、守護霊の口を開かせるため師匠シャマンのところでトランスに入る弟子シャマンが現在、ホルチン地方の農村部の田舎で 1つの日常風景となっているところが少なくない。
 本発表は、こうした現象に着目しながら、普通の人の目に見えなく、手で触れることのできないシャマンをシャマンたらしめている霊界の存在としての守護霊の憑依とその語りを取り上げる。守護霊が特定の村や地域社会の歴史文化の伝承、シャマンとその家族、地域社会に果たしている役割を具体的な事例でみてみたい。主に、トランスにおける守護霊の一人称での語りに基づく。

※当日は資料・お茶代として200円いただきます。
(例会終了後には、会場近くで懇親会を予定しております。)