2013年 仙人の会4月例会発表


日時:4月20日(土)14:00〜18:00

場所:早稲田大学戸山キャンパス31号館301教室

  ※例会会場がいつもと異なりますのでご注意ください。

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発表者:堀江 未央氏(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科 博士課程)

発表題目
 中国雲南省におけるラフ族女性の遠隔地婚出と社会変化

要旨
 1980年代以来、西南中国各地の少数民族農村において、女性が母村を離れ、山東省や安徽省、河南省など遠方の漢族男性のもとに嫁ぐ現象が起こっている。
 この西南から北東へ向かう女性の流れは、改革開放以降の中国における地域間経済格差の拡大と、計画生育政策による男女比の不均衡がもたらした、
 漢族農村の深刻なヨメ不足に起因している。そこにはしばしばブローカーが介在し、女性の被害者性と伝統社会の崩壊が研究者やメディアの間で叫ばれてきた。
 本発表は、中国雲南省瀾滄ラフ族自治県で進展する大規模な女性の婚出によって、結婚を巡るラフの社会規範や家族関係にいかなる変化が起こっているのか、
 結婚手続きの変化と、女性を巡る語り、そして婚出する娘と親の関係のあり方から論じる。
 ラフは系譜の概念が希薄な社会と言われ、夫婦というまとまりが重要な社会単位である。
 結婚によって形作られる家/村という秩序空間での性規範のコントロールは厳重で、外とは明確に区別される。
 そのなかで、日常的な行動範囲を大きく超える遠隔地への婚出は、逃避を意味する「ポイ(逃げる)」という言葉で語られてきた。
 外地漢族との結婚は多くの女性にとって憧れであり、女性の流出を危惧するラフ男性たちはラフ女性との結婚手続きに非常に慎重になっている。
 それを、具体的な結婚手続きにおける両家間の交渉から示す。
 漢族男性との結婚は、女性たちを魅了するものの、実際には必ずしも女性たちの期待するような経済的上昇を伴わず、婚出先の選択においてラフ女性は受動的立場に置かれている。
 その孤立的状況に対処するため、女性たちは婚出の際に頼るべき仲介者を漢族ブローカーからラフの友人たちへと移行させ、自分たちの親戚/友人ネットワークを活用するようになっている。結果として、同一村出身者がひとつの地域に多く集まるという分布が生じ、そこにはラフ女性の集まるラフ語空間が形成される。
 彼女たちがそこで故郷とのつながりをいかに語るのか、ラフ語空間における女性の語りを分析する。
 そして、「里帰り」か「逃げ帰り」か分からない曖昧な行動を取る娘に対して、母親たちがどのように対処しようとしているのか、娘の「囲炉裏の魂」と戸籍の処遇から論じる。
 最後に、ラフにおける「ポイ(逃げる)」の持つ意味と、そこに生まれるつながりの可能性について議論したい。

※例会終了後には、会場近くで懇親会を予定しております。

 本会では発表希望者を募集しております。
 発表者には懇親会費無料の特典つき。
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