日時:12月23日(日) 14:00〜18:00
場所:法政大学大学院棟(旧92年館)3階301号室
JR中央線・地下鉄南北線飯田橋あるいは市ヶ谷駅または
JR中央線・地下鉄南北線/有楽町線/東西線飯田橋駅下車、徒歩約10分
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発表者:川瀬 由高氏(首都大学東京大学院 博士後期課程)
発表題目
「複数の機能主義」とホリズム―費孝通『中国の農民生活』の可能性
要旨
費孝通の手によるPeasant Life in China(1939年、以下PLCと表記)は、通常、中国民
族誌学の代表的著作であるとされている。しかし私見では、そのような「通説的評価」の
根拠についての理論的な検討は、とりわけ人類学の立場からのそれは、十分になされてこ
なかった。その理由としては、PLCで扱われた地域(華東)が、当時の親族パラダイムに
適合的な事例を提供する地域ではなかったこと[瀬川2004:54]、また、多くの人類学者が
東南中国をフィールドとしていたことなどが挙げられるだろう。本発表では、PLCを未だ
理論的可能性が読みつくされていないものと位置づけた上で、(1)その理論的背景の独
自性について明らかにするとともに、(2)現代人類学に対する示唆を引き出すことを試
みる。
(1)PLCを再評価するにあたり不可欠なのが、人類学史の観点から、費孝通の研究背
景を跡付ける作業である。なぜなら、これまでに膨大な数の費孝通論が蓄積されてはいる
ものの、そこでは、「忘却のかなた」に追いやられていた、マリノフスキーのアフリカ
研究と文化接触研究の理論的意義[清水1999]について、そして、その枠組みを費孝通が踏
襲しPLCを執筆していることについて、理解を欠いたまま議論が展開されていたからであ
る。そこで、本発表ではまず、費孝通が学問を志してからPLCを執筆するにいたる経緯を
具体的に跡付ける。この作業を通し、費孝通はいわば「複数の機能主義」を背景とする人
物であったことを示す。
(2)次に、PLCが現代人類学にとってどのような示唆を持つものであるか、「複数
の機能主義」に留意しながら考察する。その際に着目したいのが、ホリズムという概念
である。ここ数年、ホリズム(holism/全体論)に関する議論は人類学においても活況
に沸いている[e.g.渡邊2004; Parkin and Ulijaszek (eds.) 2007; 高橋2009; Otto and
Bubandt(eds.) 2010; 宮武2012]。その背景には、人類学の諸中心概念が批判的検討にさ
らされると共に、対象社会の変化に対応しようとする人類学の方向性を占おうという研究
動向のなかで、人類学という学問が有する独自性ないし求心力をホリズムに求める流れが
少なからず存在するからである。本発表では、このような研究動向を念頭に置きつつ、
PLCにおける「複数の機能主義」がホリズムという観点からはどのように評価できるか、
その長所と短所はどのようなものなのか検討する。この作業を通し、『文化批判としての
人類学』で要請されていたアプローチへの手がかりがPLCには読み取れることを示す。
※当日は資料・お茶代として200円いただきます。
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