2012年 仙人の会11月例会発表


日時:11月18日(日)  14:00〜18:00

場所:法政大学大学院棟(旧92年館)3階301号室
 JR中央線・地下鉄南北線飯田橋あるいは市ヶ谷駅または  JR中央線・地下鉄南北線/有楽町線/東西線飯田橋駅下車、徒歩約10分
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発表者:佐藤 若菜氏(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科 博士課程)

発表題目
 中国貴州省東南部のミャオ族地域における民族衣装と社会関係 −婚姻を中心にして

要旨
 本発表は、中国貴州省黔東南ミャオ族・トン族自治州施秉県における、ミャオ族女性、及び女性を中心とした社会関係と、民族衣装との相互作用を考察することを主題とする。特に婚姻に着目し、異民族間での婚姻とミャオ族同士の婚姻に分け、民族衣装を介してつくられる社会関係や、社会関係によって規定される民族衣装の移動範囲について考察する。
 先行研究においてミャオ族の衣装は、政府による宣伝や社会変容をきっかけとしたグローバルな広がりとともに語られるか、ミャオ族イメージを提示するときのマーカーとして描かれるか、もしくは地域や集団別の分類に終始するかのいずれかであった。同時に、文化人類学の理論的枠組みの変遷のなかで、衣装は、主として表象論的研究の対象となってきた。また、Schein(2000)のように、一部のミャオ族がアイデンティティをアピールするときの道具として衣装が議論の対象とされることもあった。しかしながら、日常の社会生活の時空のなかでミャオ族による民族衣装の着用・制作が論じられたことはほとんどない。
 本発表では、ミャオ族の生活の上に衣装を位置づけることから、以下の3点を指摘する。
1)異民族間結婚を境に、世帯・女性・衣装のいずれかが「ミャオ化」したり、「漢化」することがある。世帯や女性が民族を変更することによって、衣装の移動範囲は変容し、また衣装を変更することによって女性の社会関係は変容する点を指摘する。
2)ミャオ族女性による民族衣装の借用や布の交換、パーツの売買は親類関係を中心に行われ、醸鬼といった憑き物による社会的忌避関係を超えて行われることはない。そこから、ミャオ族同士の婚姻においては姻族をどのように選択するかによって、衣装やその一部を借用・交換・売買する関係が規定される点を明らかにする。
3)ミャオ族女性の民族衣装は、ミャオ族男性と結婚する場合に限って、実母から娘へ譲渡される。譲渡される民族衣装の種類や着数は1970年以降大きく変化しており、それに伴い結婚後は婚家に民族衣装を持参しないことが一般的になった。民族衣装の保管場所が女性の移動に影響を与える点を、歴史的変遷を示しながら明らかにする。
 以上の3点から、ミャオ族女性の民族衣装の着用、譲渡、売買、借用を通してどのような社会関係がつくられるのか、そしてその社会関係はいかに民族衣装の移動を規定するのかについて考察する。

※当日は資料・お茶代として200円いただきます。
(なお、例会終了後には、会場近くで懇親会を予定しております。)

 
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